民家の店・宿

2020年4月 1日 (水)

東京/蕎麦「176」

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 練馬駅西口から数分の場所にあるこの店は、ひっそりと落ち着いた構えの知る人ぞ知る蕎麦の名店である。

 店名は「176」(郵 便 番 号 お よ び 住所から転用とのこと)といい、モダ ンなデザインの袖看板がさりげなく かかるが見落としそうである。店前 の植え込みの緑のしつらえから、周 辺とはひと味違う雰囲気が漂う。

店構えはかなりおさえたさりげな い佇まいで、京町家風の割烹とでも 言おうか。長暖簾の色が時々変わる ようで、今日の暖簾は何色と通うの も違った楽しみである。

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 中に入るとビルの 階とは思えな いゆったりと奥行きのある構成で、 町家とも農家ともつかない。古材と 土壁風の仕上げで構成された重厚な つくりであるが、どこか粋で明るさもほどよい。入った左手は店主が作 業する蕎麦打ち場。その前にでんと 設えられた分厚い古材利用のカウン ター席でまずお酒から始めるのも良 し、右手のゆったりしたテーブル席、 奥の板座敷で落ち着いて蕎麦をすす るも良し、とにかく居心地がよく、 つい長居をしてしまう店である。

 昼は天丼付きのそば切りが店のお すすめ。夜は蕎麦目当ての客もさる ことながら、酒、肴と居心地の良い 場所を目当てに静かに一杯飲む客も 多いとのこと。   開店から20 年、その間ほとんどつ くりは変わらず、手入れや掃除など よく気が配られて、通ごのみの雰囲 気を醸す店である。

(東京都・正会員 新居誠之)

 
店舗データ
住  所 〒176-0001東京都練馬区練馬1-7-6
アクセス 西武池袋線・都営大江戸線練馬駅から徒歩5分
電  話 03-5999-1765
メニュー せいろ750円、天せいろ1,050円
お蕎麦天丼セット1,650円
営業時間 11:30~15:00,17:00~23:00
定休日 水曜日

2019年10月23日 (水)

東京都/Gallery & Book cafe 「松庵文庫」

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 西荻窪駅から閑静な住宅街を歩くと、ふと足を止めたくなるような、緑に縁取られた木造家屋の小さなカフェがある。
 本が好きなオーナーの岡崎さんが、地名である「松庵」に「文庫」をつけて名付けた。
 もともとこの近所にお住まいだったが、ここの家主である音楽家ご夫妻の旦那さまが亡くなられた後、お住まいを譲り受け、なんと、飲食業未経験でカフェを開くことになった。

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岡崎さん曰く「怖いもの知らずだった」が、ご縁に恵まれ、無事7年目を迎えるとのこと。
 音楽家ご夫妻の教え子が訪れ、「残してくれてありがとう」とお礼を
言ってくださったのがとても嬉しくて、心の支えになっている、と話す。

2_4  ランチメニューは、お肉かお魚を選べる「お米御膳」、豚肩ロースカレー、スイーツはクレームブリュレやトライフルなど、暦に合わせて丁寧に作られる。
 中庭に植えられた樹齢100年のツツジを眺めつつ、ゆったり流れる時間を味わってみてはいかがだろう。

場  所 東京都杉並区松庵3-12-22
アクセス JR中央線西荻窪駅から徒歩7分
電  話 03-5941-3662
メニュー お米御膳1,390円
季節のトライフル650円
季節の旬の果物で提供します。
営業時間 水~金11:30~21:30 土・日11:30~18:00
定休日 月・火
HP http://shouanbunko.com

(取材:東京都・友の会会員 諸星由美恵)

2014年4月 9日 (水)

東京/すき焼きレストラン 和牛処「やまだいら」

■新潟県十日町市より、古民家を移築・再生
1_4  築造されたのは、江戸後期か明治の頃と思われます。明 治44年に新潟県の山やま平だいら村むらに役場として移築され、昭和29 年県内でただ一軒の茅葺き屋根の役場として有名でした。 その後、現在のオーナーのお父さまのご実家として使われ ていました。しかし山村の過疎化にともない越冬が難しく なり、取り壊しが検討されるようになりました。  仕事上の付き合いのあった私が勤める会社(岡建工事・ JMRA登録事業者)では、使われている柱や梁の素晴らしさ を見て、壊さずに移築して店舗にすることをお勧めしまし た。移築予定地(東京都墨田区)は建築基準法の難問が多かっ たのですが、柱を切り詰めたり、防火被覆のために外壁を 二重にしたりと防火規定もクリアし、再度、披露できる建 物として再生されました。

■囲炉裏と、癒しの世界へタイムスリップ  
2_2玄関の古材土庇をくぐり、ケ ヤキの石畳から室内へ入ると、 昭和初期へタイムスリップし たかのようです。内部は、ケ ヤキの差鴨居が54cm、柱が 24cm、太くて黒い梁と小屋組 が圧巻です。古材の軸組や建具 などの古民具を、ほとんど当時 のまま再利用しています。奥の 和室のテーブルの天板はケヤキ の無垢板仕立で、堀座卓になっ ていてくつろげます。レストラン の一角には置き囲炉裏もあり、 特別な雰囲気が味わえます。  懐かしい田舎の話でもしな がらヘルシーな「近江牛」を堪 能しませんか。昼は定食がおす すめ、夜の人気メニューは、  すき焼きです。

場所 東京都墨田区八広3-7-1
交通 京成「曳舟駅」より徒歩10分
問い合せ 電話:03-5631-2539
メニュー すき焼き・しゃぶしゃぶ・牛丼・ステーキ
「近江牛」を使用しており、茶碗蒸し・刺身な ども予約できます
営業時間 昼 11:00~ 14:00 夕17:00~ 21:00(LO20:00)
定休日 月曜日

(取材:東京都・正会員 亀上真克)

2010年9月15日 (水)

東京・立川市/パン工房「ゼルコバ」

Photo_2今ここにあるものを大切に使う
 店の名前の「ゼルコバ」とはケヤキの意味で、店は旧五日市街道のケヤキ並木が残る屋敷林の少し奥にあります。街道からの入り口には木の板に手書きの看板、店までのアプローチは野草が植えられた緑陰の小道が続きます。大正時代の建物は、養蚕のための作業場を店として使えるように少しずつ手を入れながら改装しています。丸太梁のとぶ高い天井は、ほどよい明るさを造り出しています。入り口前のカフェテラスでは、自然の風を感じながら、自家製スープやコーヒーとともにパンを味わうこともできます。

家族で作る無農薬の野菜をパンの材料に
 農業を営むパン好きの奥さんの「自分の畑で採れた野菜を材料にしたパンを作りたい」という夢から始めたこの店は、パンの材料も建物も「今ここにあるものを大切に」という思いが感じられます。働いているスタッフも含めてすべてが自然で素朴な工房です。
 パンは、国産小麦に天然酵母と天然塩を用いて溶岩窯で焼きます。これぞ田舎パンと言える素朴なパンです。皮はパリッ中はモチッとして、噛みしめるほど深い味わい。いろいろな根菜やクルミ、ドライフルーツがたっぷり入ったカンパーニュ(田舎パン)がいちおしです。

■ガイド
場所東京都立川市西砂町5-6-2
交通西武拝島線西武立川駅から徒歩20分。JR昭島駅北口からバス「西砂殿ガ谷」バス停下車。駐車場あり(台数に限りあり)
電話042-560-4544
メニユーふすまパン120円、バケット400円、自家製酵母さんのカンパーニュ(量り売り)、季節のパンほか。ソフトドリンクもあり
営業時間10:00〜17:00(パンは売れ切れ時に終了)
定休日:火曜・水曜・木曜
情報提供『民家』74号(東京都・正会員 新居誠之)

2009年7月16日 (木)

東京・文京区/リストランテ「ラ・バリック」

Labarrique_mise ■ 昭和の民家をイタリアンレストランに

約60年前に造られた鍵の手状の民家を前半分壊してマンションにし、残りを二階屋のままレストランに改造した店である。両引き戸の玄関、床の間、凝った彫刻が施された欄間、長押などを残し、和の座敷に絨毯が敷かれている。照明もほどよく、自宅の応接間にいるような落ち着いた雰囲気を醸し出している。
オーナーの坂田真一郎氏によれば、当家は氏の実家で、1年半前まではご両親が住まわれていたが、段差があって不便ゆえ引っ越されたとのこと。坂田氏は2年間ほど北イタリアでソムリエをしていたが、厨房を担当しているパートナーと東京でイタリアンレストランを開こうと六本木や原宿などを探したが適当な物件がなく、和の雰囲気を残したイタリアンもよかろうと、今に至ったそうである。

■ 食前酒もぜひお試しを

前菜からデザートまで、薄味でありながらも、それぞれしっかりした味である。量は一見少なめだが、食事が進むうち十分満腹し、パン皿が空くと補充をしてくれるので、不満はない。
イタリアンといえばパスタだが、自家製パスタは細、太麺2種、両方ともコシがあり、味も絶品である。食前酒としてオーダーしたグラスワイン(赤)も、色、香りそろったコクのある味わいだった。摘んだ葡萄をいったん干し、「干し葡萄」のようにしてから醸造するとのこと。ぜひ、お試しいただきたい逸品である。

場所東京都文京区水道2-12-2
交通東京メトロ有楽町線江戸川橋駅4番出口より徒歩5分
電話03-3943-4928(要予約)
メニユー昼 2,800円~/夜 6,500円~
営業時間昼 11:30~13:30/夜 18:00~22:00
定休日水曜日(毎週)、火曜日(毎月第二)
情報提供『民家』64号 正会員・菊水大造

2009年7月10日 (金)

東京・八王子/手打ち蕎麦「車屋」

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■ 会津只見地方の曲屋を
  移築

築130年余りの会津只見地方の曲家(旧目黒家住宅)を移築した手打ち蕎麦のお店です
現在の東京・八王子の地に移築されたのは昭和61年、木々に囲まれた建物で、静かな時を過ごすことができます。店内は自然な柔らかな光を取り込んだ明るく落ち着いたたたずまい、高い天井に大きな梁が見えます。座敷とテーブル席があり、磨かれた柱や建具、しつらえられたイス・テーブルなどにも日本文化が感じられます。

■ 体によい食材を

車屋は、甲州街道の宿場町だった八王子市に1972年開業。厳選された食材や水を取り入れた料理はどれも絶品です。食することを大切に考えて東洋・西洋医学の観点から栄養学を学び健康につながる蕎麦作りに取り組んでいる姿勢が伝わってきます。
ダッタンそば、二八そばは、品のあるのど越し。うどんも美味です。おすすめは鴨せいろ。時間と手間をかけてしっかり飼育されたであろう肉厚の鴨と蕎麦、ネギの組み合わせは口にした瞬間から食の喜びを実感できます。
旬の食材を使った季節の料理は日本酒がすすみます。食することに大切なもの、空間と安心ともてなしも味わうことができます。
「次回は何を食べようか」と何度も足を運びたくなるお店です。

場所東京都八王子市越野3-10(多摩ニュータウン内)
交通車 :中央高速「国立府中インター」から約20分
電車:京王相模原線堀之内駅下車、2番バス乗り場「北野行き」または「南大沢行き」、「帝京中高校前」下車
電話0426‐76‐9505  http://www.soba-kurumaya.co.jp/
メニユー茶室 塚越 抹茶(菓子付き)600円/萩月庵 もり蕎麦 1,200円
営業時間11:00~15:00、17:00~20:00
定休日毎水曜日・第三木曜日
情報提供『民家』61号 友の会会員・山田夕湖

2009年7月 5日 (日)

東京・文京区/串揚げ処「はん亭」

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■ 下町の三階建て商家

東京都23区内でふらりと町歩きなぞ……といった気分のときに、真っ先に足が向くのが、「はん亭」のある根津界隈だろう。近隣も含めて「谷根千」(谷中・根津・千駄木)として紹介されることも多い。丹精された鉢植えが並ぶ二階家の小路、個人商店の年季の入った看板などをたどるうちに、暮らしがもっとゆっくりしていた時代に入り込んでいく。
はん亭はもともと、明治42年に下駄の瓜皮を商う店として建てられ、大正期に蔵と三階建て部分が増築されて現在の姿になった。関東大震災、東京大空襲の戦災もくぐり抜けた、東京では数少ない木造三階建ての商家である。

■ 吟味した素材をたっぷりの野菜で

昭和40年代の半ば、先代店主の高須治雄さんは、運送会社の独身寮として使われていたこの建物を偶然、通りがかりに見た。相当傷んでいたが、根津の町の財産としてなんとか残したいと思った治雄さんはこれを譲り受け、串揚げを供するはん亭として蘇らせた。
現在は、二代目の徹さんが店を守る。はん亭の串揚げは、吟味した肉や魚介、野菜、珍味など三十余種。たっぷりの新鮮な生野菜が揚げの味を引き立てる。建物ともども、先代から引き継いだスタイルはいまも変わらない。父子二代にわたる熱い思いが、いまや根津のランドマークとなった下町の三階家・はん亭を支えている。

場所東京都文京区根津 2-12-15
電話03-3828-1440
URLhttp://www.hantei.co.jp/
交通東京メトロ千代田線根津駅不忍池方面出口から1分
メニュー最初のセット<一の膳>(串揚げ6種に酒菜2品)  2,835円
はん亭<昼膳> 3,500円
営業時間11:30〜15:00、17:00〜22:00
定休日月曜日(祝祭日の場合は翌日)
情報提供『民家』59号 正会員・杉浦干城