情報誌「民家」

情報誌『民家』は、民家に関する初歩的な知識、民家をめぐる動き、民家再生の事例・体験記、民家バンク情報、民家活用・まちづくりの事例等々、広範な情報を提供しています。年6回発行です。

入会された方には「JMRA通信」と合わせてお送りしています。 ※ 見本誌申し込みはこちらから

2010年3月 5日 (金)

71号(2010年3月発行)

Cover_71 岩木山を額縁にして
(青森県岩木町葛原)
撮影=桜庭文男

巻頭インタビュー
伝統産業の「極める文化」が日本を支える

プロダクトデザイナー/喜多俊之

日本の伝統工芸の方々とお付き合いを始めてもう40年くらいになります。1960年代の後半からですが、その頃伝統工芸がいちばん衰退の激しい大変なときでした。現在では人々の認識が変わりつつありますが、当時は「古いものは時代遅れ」という考え方が一般的でした。
知り合いになった美濃の和紙職人の方が「もうやめようと思うんですよ」と言うのを聞いて「何か使い方を考えてみます」と約束しました。その年から私はイタリアに行くことになっていました。それで、向こうで照明器具のデザインをする機会があったときにその職人の紙を使ったのです。インテリアブームが始まっていた現地でそれがヒットしたのです。 その職人さんの元に大量の注文が来るようになりました。そのとき、それを見て、使えば日本の伝統工芸も生き延びる道があるのだということに気が付いたのです。
これが契機で、そのあと輪島の漆塗、佐賀の有田焼など、産地の方々とお付き合いが続きました。伝統工芸の仕事をライフワークとしてやろうと決心したのも、その和紙を使った照明器具TAKOのヒットにありました。

私が六〇年代後半に渡ったイタリアは、戦後の復興から立ち直って、新しいものだけでなく過去の古いものの値打ちに人々が注目する時代に入ったときでした。時間のたったものほど値打ちがあるとして手に入れたいと考えはじめた頃でした。都市や山間部、漁村にある値打ちのある家などを、行政が保存の手を差し伸べ、またそれらに共感する人は買い始めていました。(後略)

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Face_71

きた・としゆき

1942 年大阪市生まれ。1969 年より、プロダクトデザイナーとして、日本にとどまらずイタリアを始め、国際的 に制作活動を拡げていく。家庭日用品、家具、液晶テレビ、ロボットに至るまで、多くのヒット商品を生む。作品は、ニューヨーク近代美術館、パリ国立近代美術館、ミュンヘン近代美術館などに多くコレクションされている。近年は、大阪芸術大学にて教鞭をとるほか、中国でのRed Star Award 審査委員を務めるなど、教育活動にも力を入れている。長年にわたり、日本の伝統工芸、地場産業の活性化に関わる。近著に『地場産業+デザイン』がある。

  • 「フランスの美しい村々と民家を訪ねる旅」から/フランス民家協会との実り多い交流 佐藤彰啓
  • フランスの古民家事情 日塔和彦
  • 民家の宿、民家の店
  • ようこそ民家園へ(1)/全国各地の民家を集めた野外博物館 奥山淳三
  • 民家再生事例/特別なことでない民家再生へ 静岡県藤枝市 F邸 杉村喜美雄
  • この人この仕事/石積み工 霜村次朗さん 杉浦干城
  • 読者のひろば 民家ネットワーク
  • 書籍紹介 『それでも「木密」に住み続けたい』
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • JMRAイベント報告
  • 民家の宿、民家の店
  • 事務局ニュース
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐

2010年1月 9日 (土)

70号(2010年1月発行)

Cover_70 雪解けの里(三津谷の煉瓦蔵)
(福島県喜多方市)
撮影=金田 実

巻頭インタビュー
見直したい、自然や歴史と連帯した家づくり

哲学者/内山節

群馬県の上野村と東京との二重生活をして40年近くになります。ヤマメやイワナを釣りに行った上野村が気に入り、「ここで暮らすのもいいかな」といった感じで住みはじめました。いまは畑を150坪くらい作っています。庭から続く山も一ヘクタールくらいあって、急傾斜ですが、とても使いやすい。キノコもたくさん採れます。都会に比べたら、村 の暮らしのほうがはるかに面白いですよ。
わが家は築100年はたっているとはいえ、いわゆる「古民家」の雰囲気はなくて、当時やっつけ仕事で造ったような家です。決していい材料を使っているわけではありませんし、本職の大工さんではなくて「大八」が仕事をしたと思われる造りです。大工まではいかないから九の前の八。昔は、農業などの傍ら、頼まれるとちょっとした大工仕事もする人たちが村には結構いました。
その程度の家が、100年たってもまるでガタがこない。隙間風は入りますよ。だけど、基本はしっかりしています。手抜きの家でもちゃんともつことに感心しています。

私は、北海道から九州まで山村を泊まり歩いて釣りをしていた頃に、村の人からいろいろ話を聞くことができました。そこではしばしば、キツネにだまされた村人の話が出てきました。ところが、1965年頃以降、そういう話をまったく聞かなくなりました。それは日本全国一斉の現象です。私は、この頃を境に「キツネにだまされた」と当たり前のように話す「人間と自然との関係」がなくなったと見ています。(後略)

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Face_70

うちやま・ たかし

1950 年、東京都生まれ。都立新宿高校卒。哲学者。1971 年に群馬県上野村の古い家を譲り受け、東京と往復しながら暮らす。元立教大学異文化コミュニケーション研究科特任教授。NPO 法人「森づくりフォーラム」代表理事として、森林ボランティアならではの森とのかかわり方についても提 案している。JMRA 特別会員。
著書に『自然と労働』『森にかよう道』『貨幣の思想史』『戦争という仕事』『哲学の冒険』『怯えの時代』『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』ほか、多数。

  • 「民家フォーラム2009」特集:緑豊かな福島県に全国から200人が集まった
  • シンポジウム/ 基調講演:イギリスに限界集落はなかった 犬伏武彦
  • シンポジウム/ 事例報告・討論:民家を生かす、地域をおこす 松浦猛将・江花圭司・山田哲矢・原啓
  • オプショナルツアー報告:蔵のまち喜多方を巡る/ いわきの民家を巡る
  • フォーラムにかけた私たちの思い 宗像智加枝
  • シリーズ・民家トラスト(2) 庄屋の建物を地域の交流の場に<島根県邑南町稲積家住宅のイベントに参加して>
  • 読者のひろば 民家ネットワーク
  • 書籍紹介 『新訂・日本建築』/『つみきのいえ』
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • JMRAイベント報告
  • 民家の宿、民家の店
  • 事務局ニュース
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐

2009年11月 1日 (日)

69号(2009年11月発行)

Cover_69 水引集落の茅葺き民家(福島県南会津
郡南会津町<旧舘岩村>)
撮影=桜庭文男

巻頭インタビュー
子どもたちを食べ物が育つ土で遊ばせたい

俳優/永島敏行

僕は、千葉市の海辺で生まれ育ちました。両親が営む旅館は、海が近く湿気対策のためでしょう、床下が三尺もありました。建てられてから80年は経っているので古民家のようなものです。縁側が好きでしたね。庭にはカニが住んでいて、学校に上がる前はカニが遊び友達でした。
いまは埋め立てられていますが、子どもの頃は遠浅の海が続いていて、潮が引くと海の中を6キロ近く歩いていけた。
アサリをとってきて味噌汁に入れたり、食卓には東京湾の海の幸が並びました。海苔、イワシ、アジなどの小魚、それにヒラメ、カレイ、ワタリガニ、エビ類…、みんな地元のものです。

いまの東京ではいろいろなものが食べられますが、自分が何を食べて育ってきたかがわかりにくくなっている。自分の生命を支える食べ物との距離が遠くなっているのではないかと思います。
海も暮らしから遠くなった。銀座からは10分ほどで海に出られますが、ここで獲れた食べ物を口にすることも、子どもたちが遊びに行くことも、まずありません。土も遠くなった。公園に土はあっても、食べ物を育てる土ではないですよね。
夏になると、岬にある親戚の家に遊びに行きました。元は網元の家だったというそこも、やはり、床下は三尺。高台に建つ灯台のような家で、海が遠くのほうまで見えました。
子どものころの体験で、その後の生き方が決まっていくような気がします。僕は、感性も含め東京湾の恵みに育てられたと思っています。(後略)

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Face_69

ながしま・としゆき

11956 年、千葉県千葉市生まれ。俳優として、映画、テレビ、ラジオ、舞台と幅広く活動。中学から大学まで野球部に所属。映画『ドカベン』でデビューし、1978 年に主演した『サード』で新人賞を多数獲得。
1995 年に千葉県成田市で「永島敏行稲作り体験教室」を開始。2005 年に有限会社青空市場を設立。現在、「産地発! たべもの一直線」(NHK)の司会も務めている。

  • フランスの村々と民家を訪ねる旅 長谷川順一
  • 我が地域の民家(11) 岩手県の曲がり家 佐々木文彦・吉田晃
  • 民家再生事例 雪国の農家を富士山の見える地に 静岡県田方郡函南町 花上邸
  • 民家再生事例 高齢者も暮らしやすい田の字型民家 千葉県鴨川市 苅込邸
  • 夢をかなえて 土地の文法で建つ民家は体にいいらしい 藤井浩
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • 読者のひろば 民家ネットワーク
  • 書籍紹介 『神去なあなあ日常』ほか
  • JMRAイベント報告
  • 民家の宿、民家の店
  • 「民家フォーラム2009」協賛広告、名刺広告
  • 日本民家再生協会2008年度活動報告・決算
  • 事務局ニュース
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐

2009年10月22日 (木)

68号(2009年9月発行)

Cover_68 畜舎兼納屋と主屋をつないだ分棟型
民家 撮影=大橋富夫
(大橋富夫写真集『日本の民家 屋根
の記憶』彰国社刊より)

巻頭インタビュー
本当に深いものは数値では表せない

数学者/藤原正彦

皆さんが卒業した小学校の校舎は木造だったでしょうか。しかしいま、その校舎はおそらくほとんどがコンクリートで建て替えられていると思います。
それが最近、木造校舎が見直され、復活運動が起きてきているようです。当然でしょう。私は木造校舎を見ると、「あっ、涙がにじんでいるな」と思います。子どもたちや先生、両親、みんなの何十年間もの涙が古い木造校舎ににじんでいる。コンクリートの校舎は涙をはじいてしまいます。それだけでも、子どもたちが成長したときの思い出の感触がまったく違います。

こうした感触が木造とコンクリートでどう違うかは、数値で表すことはできません。所得のようなわけにはいかない。本当に深いものは数値では表せないのです。数値を並べた理屈ばかりでは人間は救われません。
「民家はいいなあ」「美しい自然はいいなあ」あるいは「もののあわれというのは心持ちがいいなあ」。そうした情緒的なものを大切にする運動が、どんどん広がっていってほしいものです。コンクリートジャングルのような地 域と、川や森が見える地域に育った人とでは心持ちも違ってきます。
美しい自然が身近にないと、美的感受性は育ちません。この感受性がないと、数学や物理といった自然科学、もちろん優れた文学も芸術も生まれません。ノーベル賞を受賞するような新しい発想は生まれてこないのです。(後略)

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Face_68

ふじわら・まさひこ

1943 年、旧満州生まれ。
東京大学理学部数学科大学院修士課程修了。お茶の水女子大学名誉教授。数学者、エッセイスト。作家・新田次郎と藤原ていの次男。
『数学者の言葉では』『若き数学者のアメリカ』(日本エッセイスト・クラブ賞受賞)『遥かなるケンブリッジ』『国家の品格』など著書多数。

  • 座談会 「民家の学校」10年を迎えて
  • 民家の宿、民家の店
  • 我が地域の民家(10) 静岡県の民家 松永和廣
  • コウゾが望む紙を作りたい —和紙作家・小林康生さんに聞く—
  • 民家再生事例 人と人を結ぶ蔵店舗への再生 佐賀県鳥栖市 蔵だしめんたい本舗 弥生が丘店
  • 夢をかなえて 豊かな自然を孫たちの原風景に 深津保雄
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • 読者のひろば 民家ネットワーク
  • 書籍紹介 『なぜ、いま木の建築なのか』/『四季の民家』
  • JMRAイベント報告
  • 事務局ニュース
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐

2009年7月27日 (月)

67号(2009年7月発行)

Cover_67 水田を民家が囲む環状集落・荻ノ島
にて  撮影=田中達也

巻頭インタビュー
山里の民家は山の自然を取り込んでいる

作家/イラストレーター
遠藤ケイ

僕は、10年くらい前から新潟県三条市で築約130年の民家を拠点として活動するNPO「しただテラ小屋」の運営にあたっています。
ここでは毎月、囲炉裏を囲んで語り合う「炉辺夜話」の会や、マイ包丁をつくる鍛冶屋講座を開いているんですよ。去年は、女優の根岸季衣さんのひとり芝居も上演しました。新潟の民話をもとにした脚本を僕が書き、旧知の根岸さんにお願いしたら、民家での芝居を面白がってくれて。奥の座敷に100人くらい集まりました。

今年の一月には、東京の「子どもワークショップフォーラム」の子どもたちがやってきて、二泊三日で雪国の暮らしを体験しました。雪合戦に始まり、地元の名人を先生にカンジキを作ったり、で灯籠を作って庭いっぱいに灯りをともしたり。子どもたちからいろいろなアイデアが出て、幻想的で美しい雪景色が広がりました。子どもたちの一番人気は風呂焚きでしたね。薪を奪い合って燃やしてました。夜は、僕が描いた絵を壁に映しながら、この家に棲んでいたお化けたちの話を朗読しました。住む人がいなかった間、ホウキやハタキに宿るお化けや、便所にいる雪隠坊主がどうしていたか。最後は掃除の時間でしたが、「トイレを汚すと雪隠坊主が出てくる」と言って、一所懸命掃除をしていました。子ども独特の感性で何かを感じとっているんですね。(後略)

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Face_67

えんどう・けい

1944 年、新潟県生まれ。自然の中で手づくり暮らしを実践しながら日本全国、世界各地を訪ね歩き、人々の生業や生活習俗を取材。子どもの遊び、野外生活、民俗学をテーマに絵と文による執筆活動を続けている。『こども遊び大全』(新宿書房)、『男の民俗学』(1 〜3 巻、小学館文庫)、『暮らしの和道具』(ちくま新書)、『熊を殺すと雨が降る』(ちくま文庫)、『海の道 山の道』(筑摩書房)など、著書多数。

  • 新名称が「日本民家再生協会」に 代表理事 佐藤彰啓
  • 我が地域の民家(9) 京都府北部の民家 吉井幸男
  • 「民家の寺子屋」でセルフビルドの再生を学ぶ 武田一成/木村 慶/西本佳代子
  • 甲州民家を活かして村おこし —山梨県甲州市上条集落の取り組み—
  • 民家再生事例 築125年の住まいを次世代に引き継ぐ 群馬県吾妻郡長野原町 一柳 宿
  • 私のおすすめ建築材料 目積畳表 古川 保
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • 読者のひろば 民家ネットワーク
  • 書籍紹介 『 民家造』/『火天の城』
  • JMRAイベント報告
  • 新たに指定・選定された重文と重伝建地区 —文化審議会答申—
  • 日本民家再生協会2008年度活動報告・決算
  • 事務局ニュース
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐