70号(2010年1月発行)
雪解けの里(三津谷の煉瓦蔵)(福島県喜多方市)
撮影=金田 実
巻頭インタビュー
見直したい、自然や歴史と連帯した家づくり
哲学者/内山節
群馬県の上野村と東京との二重生活をして40年近くになります。ヤマメやイワナを釣りに行った上野村が気に入り、「ここで暮らすのもいいかな」といった感じで住みはじめました。いまは畑を150坪くらい作っています。庭から続く山も一ヘクタールくらいあって、急傾斜ですが、とても使いやすい。キノコもたくさん採れます。都会に比べたら、村
の暮らしのほうがはるかに面白いですよ。
わが家は築100年はたっているとはいえ、いわゆる「古民家」の雰囲気はなくて、当時やっつけ仕事で造ったような家です。決していい材料を使っているわけではありませんし、本職の大工さんではなくて「大八」が仕事をしたと思われる造りです。大工まではいかないから九の前の八。昔は、農業などの傍ら、頼まれるとちょっとした大工仕事もする人たちが村には結構いました。
その程度の家が、100年たってもまるでガタがこない。隙間風は入りますよ。だけど、基本はしっかりしています。手抜きの家でもちゃんともつことに感心しています。
私は、北海道から九州まで山村を泊まり歩いて釣りをしていた頃に、村の人からいろいろ話を聞くことができました。そこではしばしば、キツネにだまされた村人の話が出てきました。ところが、1965年頃以降、そういう話をまったく聞かなくなりました。それは日本全国一斉の現象です。私は、この頃を境に「キツネにだまされた」と当たり前のように話す「人間と自然との関係」がなくなったと見ています。(後略)
うちやま・ たかし
1950 年、東京都生まれ。都立新宿高校卒。哲学者。1971 年に群馬県上野村の古い家を譲り受け、東京と往復しながら暮らす。元立教大学異文化コミュニケーション研究科特任教授。NPO 法人「森づくりフォーラム」代表理事として、森林ボランティアならではの森とのかかわり方についても提
案している。JMRA 特別会員。
著書に『自然と労働』『森にかよう道』『貨幣の思想史』『戦争という仕事』『哲学の冒険』『怯えの時代』『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』ほか、多数。
- 「民家フォーラム2009」特集:緑豊かな福島県に全国から200人が集まった
- シンポジウム/ 基調講演:イギリスに限界集落はなかった 犬伏武彦
- シンポジウム/ 事例報告・討論:民家を生かす、地域をおこす 松浦猛将・江花圭司・山田哲矢・原啓
- オプショナルツアー報告:蔵のまち喜多方を巡る/ いわきの民家を巡る
- フォーラムにかけた私たちの思い 宗像智加枝
- シリーズ・民家トラスト(2) 庄屋の建物を地域の交流の場に<島根県邑南町稲積家住宅のイベントに参加して>
- 読者のひろば 民家ネットワーク
- 書籍紹介 『新訂・日本建築』/『つみきのいえ』
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