情報誌「民家」

2009年11月 1日 (日)

69号(2009年11月発行)

Cover_69 水引集落の茅葺き民家(福島県南会津
郡南会津町<旧舘岩村>)
撮影=桜庭文男

巻頭インタビュー
子どもたちを食べ物が育つ土で遊ばせたい

俳優/永島敏行

僕は、千葉市の海辺で生まれ育ちました。両親が営む旅館は、海が近く湿気対策のためでしょう、床下が三尺もありました。建てられてから80年は経っているので古民家のようなものです。縁側が好きでしたね。庭にはカニが住んでいて、学校に上がる前はカニが遊び友達でした。
いまは埋め立てられていますが、子どもの頃は遠浅の海が続いていて、潮が引くと海の中を6キロ近く歩いていけた。
アサリをとってきて味噌汁に入れたり、食卓には東京湾の海の幸が並びました。海苔、イワシ、アジなどの小魚、それにヒラメ、カレイ、ワタリガニ、エビ類…、みんな地元のものです。

いまの東京ではいろいろなものが食べられますが、自分が何を食べて育ってきたかがわかりにくくなっている。自分の生命を支える食べ物との距離が遠くなっているのではないかと思います。
海も暮らしから遠くなった。銀座からは10分ほどで海に出られますが、ここで獲れた食べ物を口にすることも、子どもたちが遊びに行くことも、まずありません。土も遠くなった。公園に土はあっても、食べ物を育てる土ではないですよね。
夏になると、岬にある親戚の家に遊びに行きました。元は網元の家だったというそこも、やはり、床下は三尺。高台に建つ灯台のような家で、海が遠くのほうまで見えました。
子どものころの体験で、その後の生き方が決まっていくような気がします。僕は、感性も含め東京湾の恵みに育てられたと思っています。(後略)

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Face_69

ながしま・としゆき

11956 年、千葉県千葉市生まれ。俳優として、映画、テレビ、ラジオ、舞台と幅広く活動。中学から大学まで野球部に所属。映画『ドカベン』でデビューし、1978 年に主演した『サード』で新人賞を多数獲得。
1995 年に千葉県成田市で「永島敏行稲作り体験教室」を開始。2005 年に有限会社青空市場を設立。現在、「産地発! たべもの一直線」(NHK)の司会も務めている。

  • フランスの村々と民家を訪ねる旅 長谷川順一
  • 我が地域の民家(11) 岩手県の曲がり家 佐々木文彦・吉田晃
  • 民家再生事例 雪国の農家を富士山の見える地に 静岡県田方郡函南町 花上邸
  • 民家再生事例 高齢者も暮らしやすい田の字型民家 千葉県鴨川市 苅込邸
  • 夢をかなえて 土地の文法で建つ民家は体にいいらしい 藤井浩
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • 読者のひろば 民家ネットワーク
  • 書籍紹介 『神去なあなあ日常』ほか
  • JMRAイベント報告
  • 民家の宿、民家の店
  • 「民家フォーラム2009」協賛広告、名刺広告
  • 日本民家再生協会2008年度活動報告・決算
  • 事務局ニュース
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐

2009年10月22日 (木)

68号(2009年9月発行)

Cover_68 畜舎兼納屋と主屋をつないだ分棟型
民家 撮影=大橋富夫
(大橋富夫写真集『日本の民家 屋根
の記憶』彰国社刊より)

巻頭インタビュー
本当に深いものは数値では表せない

数学者/藤原正彦

皆さんが卒業した小学校の校舎は木造だったでしょうか。しかしいま、その校舎はおそらくほとんどがコンクリートで建て替えられていると思います。
それが最近、木造校舎が見直され、復活運動が起きてきているようです。当然でしょう。私は木造校舎を見ると、「あっ、涙がにじんでいるな」と思います。子どもたちや先生、両親、みんなの何十年間もの涙が古い木造校舎ににじんでいる。コンクリートの校舎は涙をはじいてしまいます。それだけでも、子どもたちが成長したときの思い出の感触がまったく違います。

こうした感触が木造とコンクリートでどう違うかは、数値で表すことはできません。所得のようなわけにはいかない。本当に深いものは数値では表せないのです。数値を並べた理屈ばかりでは人間は救われません。
「民家はいいなあ」「美しい自然はいいなあ」あるいは「もののあわれというのは心持ちがいいなあ」。そうした情緒的なものを大切にする運動が、どんどん広がっていってほしいものです。コンクリートジャングルのような地 域と、川や森が見える地域に育った人とでは心持ちも違ってきます。
美しい自然が身近にないと、美的感受性は育ちません。この感受性がないと、数学や物理といった自然科学、もちろん優れた文学も芸術も生まれません。ノーベル賞を受賞するような新しい発想は生まれてこないのです。(後略)

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Face_68

ふじわら・まさひこ

1943 年、旧満州生まれ。
東京大学理学部数学科大学院修士課程修了。お茶の水女子大学名誉教授。数学者、エッセイスト。作家・新田次郎と藤原ていの次男。
『数学者の言葉では』『若き数学者のアメリカ』(日本エッセイスト・クラブ賞受賞)『遥かなるケンブリッジ』『国家の品格』など著書多数。

  • 座談会 「民家の学校」10年を迎えて
  • 民家の宿、民家の店
  • 我が地域の民家(10) 静岡県の民家 松永和廣
  • コウゾが望む紙を作りたい —和紙作家・小林康生さんに聞く—
  • 民家再生事例 人と人を結ぶ蔵店舗への再生 佐賀県鳥栖市 蔵だしめんたい本舗 弥生が丘店
  • 夢をかなえて 豊かな自然を孫たちの原風景に 深津保雄
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • 読者のひろば 民家ネットワーク
  • 書籍紹介 『なぜ、いま木の建築なのか』/『四季の民家』
  • JMRAイベント報告
  • 事務局ニュース
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐

2009年7月27日 (月)

67号(2009年7月発行)

Cover_67 水田を民家が囲む環状集落・荻ノ島
にて  撮影=田中達也

巻頭インタビュー
山里の民家は山の自然を取り込んでいる

作家/イラストレーター
遠藤ケイ

僕は、10年くらい前から新潟県三条市で築約130年の民家を拠点として活動するNPO「しただテラ小屋」の運営にあたっています。
ここでは毎月、囲炉裏を囲んで語り合う「炉辺夜話」の会や、マイ包丁をつくる鍛冶屋講座を開いているんですよ。去年は、女優の根岸季衣さんのひとり芝居も上演しました。新潟の民話をもとにした脚本を僕が書き、旧知の根岸さんにお願いしたら、民家での芝居を面白がってくれて。奥の座敷に100人くらい集まりました。

今年の一月には、東京の「子どもワークショップフォーラム」の子どもたちがやってきて、二泊三日で雪国の暮らしを体験しました。雪合戦に始まり、地元の名人を先生にカンジキを作ったり、で灯籠を作って庭いっぱいに灯りをともしたり。子どもたちからいろいろなアイデアが出て、幻想的で美しい雪景色が広がりました。子どもたちの一番人気は風呂焚きでしたね。薪を奪い合って燃やしてました。夜は、僕が描いた絵を壁に映しながら、この家に棲んでいたお化けたちの話を朗読しました。住む人がいなかった間、ホウキやハタキに宿るお化けや、便所にいる雪隠坊主がどうしていたか。最後は掃除の時間でしたが、「トイレを汚すと雪隠坊主が出てくる」と言って、一所懸命掃除をしていました。子ども独特の感性で何かを感じとっているんですね。(後略)

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Face_67

えんどう・けい

1944 年、新潟県生まれ。自然の中で手づくり暮らしを実践しながら日本全国、世界各地を訪ね歩き、人々の生業や生活習俗を取材。子どもの遊び、野外生活、民俗学をテーマに絵と文による執筆活動を続けている。『こども遊び大全』(新宿書房)、『男の民俗学』(1 〜3 巻、小学館文庫)、『暮らしの和道具』(ちくま新書)、『熊を殺すと雨が降る』(ちくま文庫)、『海の道 山の道』(筑摩書房)など、著書多数。

  • 新名称が「日本民家再生協会」に 代表理事 佐藤彰啓
  • 我が地域の民家(9) 京都府北部の民家 吉井幸男
  • 「民家の寺子屋」でセルフビルドの再生を学ぶ 武田一成/木村 慶/西本佳代子
  • 甲州民家を活かして村おこし —山梨県甲州市上条集落の取り組み—
  • 民家再生事例 築125年の住まいを次世代に引き継ぐ 群馬県吾妻郡長野原町 一柳 宿
  • 私のおすすめ建築材料 目積畳表 古川 保
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • 読者のひろば 民家ネットワーク
  • 書籍紹介 『 民家造』/『火天の城』
  • JMRAイベント報告
  • 新たに指定・選定された重文と重伝建地区 —文化審議会答申—
  • 日本民家再生協会2008年度活動報告・決算
  • 事務局ニュース
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐

2009年7月26日 (日)

66号(2009年5月発行)

Cover_66_2 水害に備えた高い石垣のある土蔵  撮影=林 安直

巻頭インタビュー
木の文化をもう一度取り戻したい

建築家
隈 研吾

僕は、横浜の大倉山というところで育ちました。大井町で医者をしていた祖父が畑仕事が好きで、大倉山に農家から畑を借りて、そこに小さな小屋のような家を建てて週末は畑仕事をしていたのです。それをそのまま改装した家に住んでいました。

東横線の沿線ですが、僕の育った昭和30年代は田舎から都市に切り替わる時期で、ビニールクロスにアルミサッシに蛍光灯というような典型的な高度成長期の住宅がすごい勢いで建っていきました。そのなかで、僕の家だけが友だちの家に比べて古くて、平屋で土壁のあばら家でした。最初はどうしようもなく恥かしかったのですが、ある時期から「これがよい住まいではないか」と自分のなかでの価値観が逆転して、自分の建築に対する好みとか好き嫌いがはっきりしてきました

この自分の育った家が、僕が建築を考えるうえでの原点になっていると思います。
その頃、あの辺は山の麓に農家が並んでいました。その農家の友だちの家に行くと、僕の家よりさらに古い家で、床下に青大将が住んでいるし、井戸には沢ガニがいて、竹やぶの中を登っていけばウズラがいたというような時代です。そういう空間を体験したことが、今につながっていると思います。(後略)

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Face_66_2

くま・けんご

1954年横浜生まれ。1979年東京大学建築学科大学院修了。コロンビア大学客員研究員を経て、2001年より慶應義塾大学教授。2009年より東京大学教授。1997年「森舞台/登米町伝統芸能伝承館」で日本建築学会賞受賞、同年「水/ガラス」で アメリカ建築家協会ベネディクタス賞受賞。2002年「那珂川町馬頭広重美術館」をはじめとする木の建築でフィンランド よりスピリット・オブ・ネイチャー 国際木の建築賞受賞。近作にサントリー美術館。著書に『自然な建築』(岩波新書) 『負ける建築』(岩波書店)『新・都市論TOKYO』(集英社新書)

  • 地震被災地民家修復支援体制がスタート
  • 座談会 蔵を住宅にどう再生するか
  • 夢をかなえて 蔵は劇場、部屋はステージ―自分らしさを演出 新村佳幸
  • 「日本民家の旅」シリーズ 沖縄の民家を訪ねる旅――伊是名村 後藤知恵子
  • わが地域の民家(8) 大和棟の民家―奈良県香芝市を中心に 菅家正王
  • 民家再生事例 住宅街で住み継がれる山里の農家 福島県郡山市 石川邸 佐藤恭也
  • この人この仕事/工房探訪 最後の江戸鍛冶―左 久作
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • 読者のひろば 民家ネットワーク
  • 書籍紹介 『森林の崩壊―国土をめぐる負の連鎖』
  • JMRAイベント報告
  • シリーズ 民家の宿、民家の店 食事処「はりこし亭」/食事処「百小屋」
  • 事務局ニュース
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐

2009年7月23日 (木)

65号(2009年3月発行)

Cover_65 見事な「通しもの」をもつ藁葺き民家
撮影=柳下征史

巻頭インタビュー
都会育ちが藁葺き民家に暮らして

生活評論家
鏡野米子

築150年余りの茅葺きの民家に住んで、15年以上になります。どうしても民家に住みたくてほうぼうを探し、やっとのことで福島県内で見つかったのですが、初めて見たときは、雨漏りがし建具の開け閉めもできない状態でした。/p>

直せるかどうかが一番の問題です。ところが、その家を見るなり、誰もが「ムリ、住めないよ」。でも、あきらめられません。夫の職場に近く、子どもが学校に通えるところで、10年近く探して出会えた家です。民家再生についての講演会に出かけたところ、講師と話ができ、設計士の松井郁夫さんを紹介いただきました。

家を調査した松井さんは「直ります。やりようですよ」と、あっさりしたものです。こちらは半信半疑。予算が限られていることを念押ししてお願いしました。大工さんは、以前の隣家を建てた人にしました。挨拶に来られたときの印象がよかったので見積もりを出してもらったら、高からず低からず、「この人なら」と決めました。その棟梁とは、今も行き来しています。増改築はもちろん、障子の張り替え、水道が凍結した、給湯器を取り替えたい、なんでもまず棟梁。すぐに責任をもって手配してくれます。(後略)

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さかいの・こめこ

暮らし研究工房主宰・薬剤師・福島県教育委員会委員。1948年群馬県前橋市生まれ。千葉大学薬学部卒業後、東京都立 衛生研究所にて働く。1995年から福島県の茅葺き民家に住み、手づくりの暮らしを実践。境野邸は1997年の「健康な住ま いコンテスト」(松下電器産業主催)に入賞、雑排水を浄化する木炭浄化槽も設置されている。著書に『自然暮らしの知恵 袋』(家の光協会)、『こどもと楽しむ日本の行事ごはん』(学陽書房)など多数。

    <目次>
  • シンポジウム 介護施設としての民家活用
    基調講演 NPO法人「天の川」理事長 飯島龍一郎
       事例紹介1 通所介護・介護予防施設「和のいえ櫻井」運営 山田哲矢
       事例紹介2 フェリカ建築&デザイン専門学校教諭 深津保雄
  • シリーズ 民家の宿、民家の店 食事処「筑紫野茶寮・野の庵」/カフェレストラン「五風十雨」
  •    
  • シリーズ・民家トラスト(1)
       豪商の出店を食事処・イベント会場に  —福岡県前原市「前原古材の森」—
  • わが地域の民家(7) 群馬県の養蚕農家 難波伸男
  • 民家再生事例   郷里の家を定年後の住まいに 山口県大島郡周防大島町 村田邸 古川保
  • ニューヨークで日本の民家を生かす 鈴山弘祐
  • U‐50(JMRA若き担い手の会)新木場を見学 小林泰三/本城正将
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • 読者のひろば 民家ネットワーク
  • 書籍紹介 『日本一の蔵めぐり—会津喜多方の迷宮』
  • JMRAイベント報告  山梨/「甲州民家」現地再生工事見学会 第三回日本民家の美術展
  • 第五回すみあい塾 茅葺き民家の研修と見学・茅刈り体験
  • 事務局ニュース
  • 小さなかやぶきの里をたずねて 埼玉県飯能市森田伊佐