情報誌「民家」

2009年7月23日 (木)

64号(2009年1月発行)

Cover_64_2 雪に覆われる民家の里
撮影=桜庭文男

巻頭インタビュー
100年もつ家を建てる

天文学者
池内 了

伝統構法で家を建てて10年になります。伝統構法にしたのは、生まれ育った姫路の家が築100年ほどの民家で、そこへの憧憬もあった気がします。また、100年はもつ家でないと資材のムダだと考えました。伝統構法では100年もつ技術が確立されています。大工さんたちは科学用語は使わないけれども、経験知として、何が大事かをよく知っています。

もう一つ、伝統構法の家のほうが部屋替えや模様替えが比較的簡単にでき、融通がききます。100年ということは、親・子・孫と、三代使うわけですね。そうすると、考え方の違う人間も住むようになりますから、柔軟性も重要です。

寒さを心配する人もいますが、私はむしろ、完全機密式の家はおかしいと思っています。エアコンで完全にコントロールして自然から切り離された生活をするのは非常に人間らしくない。夏は暑く、冬は寒いものです。そういう中で日本人は生きてきたのですから、それを受け入れるべきだと思います。寒かったら洋服を重ね着すればいいんですよ。(後略)

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Face_64

いけうち・さとる

1944年、兵庫県生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。現在、国立大学法人総合研究大学院大学理事。名古屋大学名誉教授。世界平和アピール7人委員会の委員でもある。。
著書に『お父さんが話してくれた宇宙の歴史1~4』(岩波書店)、『わが家の新築奮闘記』(晶文社)、『時間とは何か』(講談社)ほか多数。

    <目次>   
  • 「民家フォーラム2008」特集
      住みたいねん!! 古民家に……宇陀路で考える民家の活用
  •  
  • シンポジウム/基調講演   暮らしと家と私 / 宇多滋樹
  • シンポジウム/パネルディスカッション
      宇陀路で考える民家の活用
      パネリスト/太田三千男・久保順平・関根英治・田川陽子・コーディネーター 小原公輝
  • 特別会員・筑紫哲也さんを追悼して 佐藤彰啓
  • シリーズ 民家の宿、民家の店 リストランテ「ラ・バリック」/ギャラリー・蕎麦処「苔泉亭」
  • 民家再生事例 町の風景に溶け込み、人が集う家 徳島県鳴門市橋野邸 樫原寛治
  • 夢をかなえて 仲間とともに自然の恵みを楽しむ日々 相澤征雄
  • 失われゆく茅葺き民家を撮り続けて
     ―写真集『茅の家―雪国の古民家』の出版に思う― 桜庭文男
  • 英国コッツウォルズ地方の家々を巡る 西本佳代子
  • 全国空き家活用シンポジウムin江津
      ―空き家の利活用による地域再生と定住促進―
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • 民家ネットワーク
  • 書籍紹介 『伝統技法で茅葺き小屋を建ててみた』
  • JMRAイベント報告
      神奈川/茅葺き民家でビアパーティー(神奈川県横浜市港北区)
      千葉/登録文化財の民家でアロマ講習会(千葉県四街道市)
      長野/諏訪の町並み見学とシンポジウム(長野県諏訪市)
      東京/古民家で茅葺き再発見(東京都台東区)
      神奈川/秋深まる箱根で茅葺き体験(神奈川県足柄下郡箱根町)
      長野/晩秋の安曇野、造り酒屋と屋敷林の見学(長野県安曇野市)
  • 二〇〇八年度第一回JMRA登録業者の会レポート
  • 小さなかやぶきの里をたずねて 山口県山口市仁保 森田伊佐
  • 事務局ニュース

63号(2008年11月発行)

Cover_63_2 奈良県都祁村白石
撮影=佐野昌弘

巻頭インタビュー
なんもねえところでござんすが

タレント
ダニエル・カール

山形県を走るフラワー長井線に白兎(しろうさぎ)という小さな駅があります。田んぼのど真ん中にあるんですよ。一番近い家でも歩いて5分くらい。米が乗るわけじゃないですし、不思議でしょうがない。でも、稲が育っていく季節ごとに素晴らしい景色が楽しめます。この沿線は日本有数のきれいな景色のところだと思います。

何があるかと言われても、はっきり言ってなんもねえところでござんすけども。その何もなさが素晴らしいんです。雄大な山に囲まれ、見渡すかぎり田んぼが広がってる。四季がはっきりしているところで、真冬と真夏ではまったく違うよさがあります。春もいいですよ。樹齢1200年の古木などを結ぶ「置賜さくら回廊」の桜が咲きます。ほんとうに、何もないところに、桜の巨木がぽつんとあるんです。

山形県と縁ができたのは、この沿線の中学と高校に英語を教えに通った30年ほど前です。妻の実家が米沢にあって、いまも月に2,3回は足を運びます。新幹線の窓の景色で、福島県から山形県に入ったことがすぐにわかるんですよ。屋根が瓦からトタンに変わります。山形は雪が多いからでしょう。米沢や尾花沢などでは9割以上がトタン屋根じゃないかな。(後略)

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Face_63

ダニエル・カール(Daniel Kahl)

1960年、米国カリフォルニア州モンロビア市生まれ。高校時代、交換留学生として奈良県智弁学園に1年間滞在。米国パ シフィック大学在学中(国際政治経済専攻)にも来日し、大阪、京都、佐渡島に滞在する。大学卒業後、文部省英語指導主事助手として山形県に赴任し、3年間英語教育に従事。その後、翻訳・通訳会社を設立、テレビ・ラジオ等の仕事を兼務し現在に至る。ABC「おはよう朝日です」(毎週水曜放映)に出演中。

    <目次>
  • 座談会 茅葺きのこれから―今日的意義と課題 出席者 安藤邦廣・屋根晴・西尾晴夫・石川重人 わが地域の民家(6)佐賀県のヨシ葺き民家(くど造り)鈴山弘祐
  • 民家再生事例 中越沖地震で被災した民家を再生 ―伝統木構造茅葺き民家は地震に強かった 新潟県刈羽村吉田邸 長谷川一良
  • この人この仕事/工房探訪 畳職人 羽毛田正夫さん 
  • 「JMRA民家バンク」情報 
  • 民家ネットワーク 春・夏・秋・冬 
  • 書籍紹介 『民家のしくみ 環境と共生する技術と知恵』 
  • JMRAイベント報告    富山/礪波の散居村で木とふれあう・古材と木の工作と実験/福井/越前 茅葺き民家群と旧今庄宿――暮らしと活用と町並み再生/千葉/東京の町家を再現した小粋な数奇屋調住宅見学会/山梨/養蚕民家と富士川水運の蔵、提供民家見学会
  • 「民家トラスト」設立について 佐藤彰啓
  • 「民家フォーラム2008」協賛広告 
  • 「民家フォーラム2008」会員広告 
  • 事務局ニュース 36
  • 小さなかやぶきの里をたずねて 山形県西置賜郡東中山 森田伊佐

62号(2008年9月発行)

Cover_62 伊根の舟屋
撮影=大橋富夫

巻頭インタビュー
人を育む風景を残す

写真家
小松義夫

家の形やその中にいたときの感覚は、まわりの風景も含めて、人間の情緒をつくるもとになると思います。学校までの道で見る家並み、目印になる大木なども、心を育てます。だから、そうした風景を壊すことは心を踏みにじるようなもので、非常に残酷なことなんじゃないかな。

いまの日本は、その残酷さを正視できず、見ても見ぬふり、感じないふりをしてしまっているように見えます。これは、一つの防御なのかもしれません。なじんできた景観があまりにも簡単に壊されるので、それにいちいちに心が動いては生きにくいからです。しかし、これでは荒れた心の人間が増えていってしまうと、本当に心配しています。

僕は、東京都大田区に同潤会が建設した日本初の建売住宅で育ちました。同潤会は関東大震災後に住宅供給を目的として設立された財団ですが、アメリカから義捐金とヒノキをたくさん送ってもらったらしいんですね。それで僕の家も、ヒノキで造られ、廊下もまさめのヒノキ造りでした。大工さんの技も素晴らしかった。相続税の関係で、どうしても残せませんでしたが。
家が壊されるとき、息子が「この家のことは絶対忘れないからな」と吐き捨てるように言っていました。僕にすれば、こうした家で二人の子どもを育てられたのは、たいへんラッキーだったと思います。(後略)

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Face_62

こまつよしお

1945年、東京都生まれ。スタジオカメラマンを経て、南米・東欧を皮切りに世界各国で人々の暮らしを中心に取材を続けている。1981年にはヒマラヤK2の登山隊にカメラマンとして同行し、ドキュメンタリー番組「K2西壁苦闘の60日」の製作に参加。カレンダー「世界のおもしろ住宅」(松下電工)の制作を約20年続けた。現在も、多くの時間を海外取材に費やす。  主な著書に『地球生活記』『地球人記』(福音館書店)、『世界の不思議な家を訪ねて』(角川oneテーマ21)など。

    <目次>
  • 対談 外国人から見た日本の民家
    ハンス・ハルダム  オースティン・H・モーア
  • わが地域の民家(5) 富山県南砺市地域のアズマダチ 松田博司
  • 移築再生で教えられたこと 静岡県藤枝市「青野さんち」 杉村喜美雄
  • わたしの民家再生 大工とともに自ら汗を流し実家を再生 大津憲一
  • これ木連シンポジウム報告 「このままでは伝統構法の家がつくれない!」
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • JMRAイベント報告
    埼玉/第四回建て主による建て主のための「民家再生ここだけの話」
    奈良/町並みスケッチハイクと蛍能の夕べin大宇陀
    神奈川/鎌倉の移築再生民家見学会「蔵と田の字型民家再生に学ぶ」
    新潟/秘湯名木の湯 ホタルを楽しむ夕べの会
  • 民家ネットワーク 春夏秋冬
  • 書籍紹介 『ボローニャ紀行』『大橋富夫写真集 日本の民家 屋根の記憶』
  • シリーズ 民家の家 民家の店
    コテージ「CANAC」民芸茶房「木亭」
      
  • 緊急レポート 岩手 宮城内陸地震の被災地を訪ねて 広島県東広島市志和町志和堀 佐々木文彦
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐
  • 事務局ニュース

61号(2008年7月発行)

Cover_61 夏の陽を浴びる蔵壁と民家
撮影=柳下征史

巻頭インタビュー
今こそ「木の文化」の国に

日本民家再生リサイクル協会代表理事
佐藤彰啓

僕は、10年くらい前から新潟県三条市で築約130年の民家を拠点として活動するNPO「しただテラ小屋」の運営にあたっています「初心忘るべからず」は、世阿弥の言葉ですが、故観世榮夫会長の座右の銘でもありました。

JMRAは、昨年創立10周年を迎えました。1997年1月、山梨県牧丘町で「民家再生セミナー」を開催し、それと同時に「民家再生の全国的なネットワークをつくろう」との呼びかけをしました。その呼びかけは、再生された民家や取り潰されようとしている民家の写真とともに、日経、朝日、読売の新聞各紙に報道され、全国から1000件を超える問い合わせや賛同の電話が殺到しました。ひとつの情報が大きな反響を呼び起こし、それは「新しい民家再生の時代を創る」幕開けでもありました。

当時の状況は、化学物質で固められた工場生産の住宅が全国を席捲し、日本の自然、歴史や文化から生まれた民家が片隅に追いやられていました。シックハウスや建築廃材による環境悪化が大きな社会問題となりつつある時代でした。
JMRAの誕生により、全国の民家再生の情報が集まり、マスコミを通して「民家のよさ」が広く伝わるようになりました。JMRAが「民家のナショナルセンター」としての役割を果たすようになりました。現在では「民家再生」は、ハウスメーカーでさえ営業用語として使う時代です。

かつては、民家所有者の中に「民家は過去の負の遺産」との見方も多くありましたが、近年、民家所有者による現地再生が増えています。これは民家への社会的関心の高まりの中で、所有者自らがその価値を再認識し、「次世代に残すべきもの」との意識の変化です。これがなくては民家は残りません。その意味で民家を残す大きな埠頭を築きつつあるといえます。また、若 い世代に民家の人気が広まり、都市部の町家を賃貸で借りることがブームにもなっています。
10年前と比べると、民家への関心は格段に高まっていますが、一方では取り壊される民家が多いのも現実です。(後略)

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さとうあきひろ

1944年、岐阜県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、農村雑誌『家の光』にて全国各地の農業問題、農村文化活動に携わ る。その経験を踏まえ1990年に都会の人々の田舎暮らし実現を支援するため 「ふるさと情報館」を設立。その運営会社である㈱ラーバン、㈱ふるさとネット代表取締役。 田舎暮らしを実現する情報誌『月刊ふるさとネットワーク』発行人。JMRA初代理事長(97年9月~2000年11月)、2008 年5月にJMRA代表理事に選出される。

    <目次>
  • わが地域の民家(4) 甲州民家のいろいろ 石川重人
  • 民家の生きるまちづくり(22) 庄屋屋敷を地域活性化の拠点に   ―長野県伊那市富県「伊那庄屋館」―
  • 民家再生事例 イギリス流で残す山間の農家 京都府京田辺市S邸 奥山淳三
  • この人この仕事/工房探訪 風呂桶づくり 宮原信一さん 
  • 小さな島の小さな挑戦 ―民家再生による沖縄・伊是名島の島づくり 納戸義彦 
  • 「JMRA民家バンク」情報 
  • 民家ネットワーク 春・夏・秋・冬 
  • 書籍紹介 『どぞう』『平成解体新書』
  • シリーズ 民家の宿、民家の店 手打そば「車屋」/ギャラリー「梨の木畑」
  • JMRAイベント報告
      民家バンク登録民家見学会(東京都大田区)民家の絵画教室・写真教室(神奈川県川崎市・横浜市)
      織物の町 桐生を歩く(群馬県桐生市)「甲州民家」現地再生工事見学会(山梨県甲州市)
      生家の古材を受け継いだ里山の住宅見学会(埼玉県所沢市)「東海民家の学校」報告
  • JMRA第5期役員決まる 
  • 小さなかやぶきの里をたずねて 秋田県南秋田郡五城目町馬場目・北ノ又 森田伊佐
  • 事務局ニュース 

60号(2008年5月発行)

Cover_60_2 早苗田に映る民家
撮影=桜庭文男

巻頭インタビュー
価値観の転換がスタート

建築家
池田武邦

自分が設計した、快適で効率のよい超高層ビルの最上階オフィスから街に降り立ったとき、雪が舞っていました。ぶるぶる震える寒さでしたが、なぜかやすらぎ、気持ちがよかった。天をあおぎ、「人間も自然の一部なんだ」とつぶやいていました。

このときの気持ちが忘れられず、人工的な環境を前提とする建築に疑問を持つようになりました。1970年代のことです。それまで自分が懸命に行ってきた活動を否定するのですから、ショックは小さくない。このときの心情は、被弾し沈没した軽巡洋艦「矢矧」から生還し、敗戦の日本と向き合ったときに似ていたように思います。

それから80年代、東南アジアや南米、アフリカといった伝統的な住まい方が残る地域を訪ね、家を見て歩きました。 たとえば、ジャワの山奥で出合った、ヤシの葉で葺いた急傾斜の屋根の家。造形的にも素晴らしく、素材はすべて周辺の地域でとれるヤシの葉や木材でした。ヤシの葉は、雨期になると水分を含み、ベターッとくっついて水密になる。雨は屋根の急勾配に沿って流れ、家の中には入りません。また、乾期にはヤシの葉がカラカラに乾くのですきまができ、通風がよくなる。天然のクーラーになっているのです。(後略)

Face_601

いけだ たけくに

1924年、高知県生まれ。1945年、海軍士官として乗艦していた軽巡洋艦「矢矧」が被弾、沈没。火傷を負い、5時間漂流するも九死に一生を得る。1949年、東京大学第一工学部建築学科卒業。1967年、日本設計事務所(現・日本設計)の設立に参加し、取締役に就任、1976年に代表取締役、1993年に代表取締役会長、1997年から名誉会長。この間、霞ヶ関ビル、新宿三井ビルなど、黎明期の日本の超高層ビル建築に携わる。その後、環境問題に取り組み、1992年にオープンしたハウステンボスのコンセプトづくりにも深く関与した。

    <目次>
  • わが地域の民家(3)長野県中南信地方の本棟造り 長野県・正会員 安藤政英
  • 新潟県中越沖地震における 被災住宅修復支援活動の報告(後編) 新潟県・正会員 長谷川順一
  • 韓国の民家を訪ねて 大阪府・正会員 小原公輝
  • 民家再生事例 三世代が暮らす湖南地域の伝統的な家 滋賀県・正会員 伊東裕一
  • 民家に暮らす 昔ながらの暮らしがしたくて 愛知県・友の会会員 梅田道夫
  • ブルガリアの農村を訪ねて ―民家・街並み保存と観光開発― 建築家 太田邦夫
  • シリーズ 民家の宿、民家の店 中華そば「三角そばや本店」/おかき処「蕪村庵」
  • 民家ネットワーク 春・夏・秋・冬 
  • 書籍紹介 『中古民家主義』
  • 「JMRA民家バンク」情報 
  • JMRAイベント報告 
    第三回「すみあい塾」(広島県広島市安芸区)
    大磯「鴫立庵」と鴨宮「岩瀬邸」の見学会(神奈川県中郡大磯町・小田原)
    第四回茅葺きの里・八郷の散策と地元保存会との交流会(茨城県石岡市・笠間市)
    民家セミナー「民家・田舎暮らしの実例紹介」(大阪府東淀川区)ボランティアグループ・民家お助け隊連続公開講座
    「土の文化を極める」一年の活動
  • 小さなかやぶきの里をたずねて 森田伊佐
  • 事務局ニュース