情報誌「民家」

2009年7月23日 (木)

59号(2008年3月発行)

Cover_59 茨城県常陸大宮市
撮影=柳下征史

巻頭インタビュー
民家を残るネットワークづくりを

兼業農家主婦
役重真喜子

結婚した当初は、大正時代に建てられた大きな家で暮らしていました。黒光りする太い梁、ふすまを開けても開けても続く広い座敷...床積100坪という広い家は、都会育ちの私にまるで体育館のようでした。使ったことはあませんが、囲炉裏も切られていました。もちろん、その家に住みつづけるつもりで、計屋さんにも来てもらい、いろいろ検討しまた。設計屋さんは「床を張り直し、断熱材を入れれば格段に暖かくなる」と言っていましたけれども、増改築部分の扱いが難しいようで、間的にも費用的にもかなりかかりそうでした。出産間近だったため、急いで暖かい家を建なければならず、断念しました。

近所にも茅葺きの民家に住んでいる人はいませんね。朽ち果てている姿を見かけるくらいです。このあたりの民家は、昭和30、40年代建て替えられたり、屋根がトタンに葺き替えれたりしたようです。

民家は、地域の暮らしとともにあると思います。人が集まりやすい、何かのときに手伝いしすい造りになっています。現代の家は、暖か適度に快適に暮らせますが、便利すぎるのではないでしょうか。隣近所と助け合う必要もありません。しかし、不便さによって生まれる人のつながりがあると思うのです。寒ければ、こたつのある部屋に家族みんなが集まります。地域においても、かつては自然にそうした集まりがもたれ、民家がその場所になっていたわけです。
民家では、とりわけ、土間が好きです。(後略)

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Face_59

やくしげ まきこ

1967年、茨城県生まれ。父親の転勤に伴い、茨城県、東京都、千葉県を転々としながら少女時代を過ごす。農林水産省に入省し農村研修で岩手県東和町と「牛」 に出合い、1993年に農水省を退職。東和町役場(2006年花巻市に合併)に勤務しながら地域おこしに力をつくす。著書に東和町での出会いや出来事をまとめた『ヨメより先に牛がきた』がある。

    <目次>
  • JMRA設立一〇周年 「民家フォーラム2007」特集 Part 2
  • シンポジウム 地域の文化資産としての民家をどう守り生かしていくか  
          問題提起  佐藤彰啓  活動報告  白石智洋/坂本知忠/飯島龍一郎/佐藤 仁 
          総括と提言 安藤邦廣  まとめ   佐藤彰啓
  • JMRAの今後一〇年につなぐもの —JMRA設立一〇周年記念事業を振り返って 清沢和弘
  • わが地域の民家(2)新潟県魚沼・妻有地方の中門造り 小林隆治
  • 民家再生事例 福島の部材がはるか南伊豆にて再生へ 静岡県南伊豆町 古松邸 篠崎良司
  • 茅葺きのはなし(3)—中級編—茅葺きの技術(筑波地方の例)中島 信
  • 「JMRA民家バンク」情報 
  • 民家ネットワーク 春・夏・秋・冬 
  • 書籍紹介 
    『工匠たちの技と知恵——世界の住まいにみる』
    『クマともりとひと——森山まり子会長のスピーチから』
  • JMRAイベント報告
  • シリーズ 民家の宿、民家の店 串揚げ処「はん亭」/花・林・桃・源・郷「蔵久」
  • 小さなかやぶきの里をたずねて 森田伊佐
  • 事務局ニュース 

2008年1月 7日 (月)

58号(2008年1月発行)

秋田県仙北市旧田沢湖町の民家
撮影=桜庭文男(JMRA会員)

巻頭インタビュー
現代の暮らし方と整合した民家を

インテリアデザイナー
内田繁

日本には、四季の変化を繊細に感じ取り、野山に出かけ、季節の味覚を楽しむ文化があります。こうした感覚は、伝統的な坐る生活によって育まれてきたと考えています。

人間は坐ることによって、身体が安定して心に静けさが戻ってきます。静けさのなかで感じるもの、それは周囲の自然です。光、風、水……、あらゆる自然を身体に入れることができます。かつての日本人は、生命あふれる森林に囲まれていました。

韓国も坐る文化の国ですが、日本の家が木で造られているのに対して、土で造られています。これは主に建築用材の違いによるものでしょう。あちらで多く産出されるマツは幹が曲がって伸びるので、建築の主要構造材には向いていません。それに韓国は寒さが厳しいですから、この意味でも土であることが正しい選択なんですね。

一方、日本ではケヤキやヒノキといったまっすぐに伸びる木が使われます。こうした、まっすぐな用材が、垂直性・水平性がしっかりした建築デザインを発達させました。(後略)

うちだ・しげる

1943年横浜生まれ。東京造形大学、桑沢デザイン研究所客員教授。商・住空間、家具、工業デザインから地域開発に至る幅広い活動を国内外で展開している。代表作に山本耀司の一連のブティック、神戸ファッション美術館、茶室「受庵・想庵・行庵」、門司港ホテル、オリエンタルホテル広島ほか。2007年春の紫綬褒章受章。メトロポリタン美術館等に永久コレクション多数。著書に『インテリアと日本人』『普通のデザイン』など。

  • JMRA設立10周年記念「民家フォーラム2007」特集 Part 1
    フォト・レポート JMRA設立から10年、日本の民家を次代に引き継ぐために
    記念講演 民家から学ぶ共存共生の暮らし 映画作家 大林宣彦
  • 我が地域の民家(1) 滋賀県湖北地方の余呉型民家 島田廣巳
  • 民家再生事例 見知らぬ土地の懐かしい家 鹿児島県枕崎市・通山邸 谷崎久夫
  • 茅葺きのはなし(2) 初級編 吉村潤
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • 第2回民家再生奨励賞決まる
  • 新潟県中越沖地震における被災住宅修復支援活動の報告(前編) 長谷川順一
  • シリーズ 民家の宿、民家の店 里山の宿「やきもち家」/うなぎ割烹「東海亭」
  • 民家ネットワーク 春・夏・秋・冬
  • わが家が登録有形文化財に登録されて 稲積慎吾
  • JMRAイベント報告
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐
  • 事務局ニュース

2007年11月 1日 (木)

57号(2007年11月発行)

茨木県石岡市旧八郷地区の民家
撮影=柳下征史

巻頭インタビュー
力を合わせ地方の民家を維持したい

東洋文化研究家
アレックス・カー

大学生だった一九七一年、私はヒッチハイクで日本一周しました。このとき初めて、四国の祖谷(いや)で茅葺き屋根の生活を見ました。当時はまだ、このあたりはいろりを使っている家が多かったですね。

祖谷は、まさに山水画のようでした。谷の向こうの山からは滝が流れ落ち、谷間から湧き上がった霧の中に茅葺きの家が浮かび上がっていました。

こんな家を自分も欲しいと思うようになりました。過疎が進み空き家が多かったものですから、学生の僕でも買えるかなと思ったわけです。四国の山をずいぶん見て歩き、祖谷の茅葺きの民家を三八万円で購入しました。借金をすることになりましたが、古い家に住むということはロマンなんです。

もちろん、住むとなると現実も引き受けなければなりません。それも面白いんですよ。勉強になります。屋根の葺替えで、竹や茅といった自然の材料と付き合う過程が楽しく、近所の人たちといっしょに山に茅を刈りに行ったりしました。結局、一千万円以上の借金を背負うことになりましたけれども。(後略)

Alex Kerr

1952年アメリカ生まれ。1964年初来日、2年間横浜に住んだ後に帰国。エール大学で日本学専攻(学士)、オクスフォード大学でローズ奨学生として中国学を専攻(学士・修士)。1973年から徳島県祖谷で茅葺き民家の修復に取り組む一方、京都で日本伝統芸術を紹介するセミナーの運営に携わる。トラメル・クロー社の美術コレクション顧問をへて、現在、日本および東アジアの美術品の蒐集をはじめ、文化コンサルタント、執筆・講演など、多方面で活躍。著書に『美しき日本の残像』(第7回新潮学芸賞受賞、"Lost Japan"として7か国語に翻訳される)、『犬と鬼』など。

  • JMRA設立10周年企画シリーズ これからの民家の残し方(4)
    民家を再生する一人ひとりの力が伝統構法を根づかせる
    金沢工業大学・秋田県立大学名誉教授 鈴木有 聞き手:網野隆明
  • JMRA設立10周年企画シリーズ JMRAにこの人あり(6)
    民家に魅せられた、この10年
    初代民家トラストネットワーク副委員長 平尾健二
  • JMRA設立10周年記念「まちづくりシンポジウム」の報告
    増田町のまちづくりを考える
    基調講演 まちづくりをどうすすめるか 村上町屋商人会会長 吉川真嗣
  • 体験的民家再生考(18) 目的をはっきりさせて再生する 新しい技術も取り入れて住文化を受け継ぐ 鈴山弘祐
  • 民家の生きるまちづくり(21) 町並みと伝統建築物を生かす多彩な取り組み 大分県臼杵市 臼杵デザイン会議 齋藤行雄
  • 民家再生事例 100年後に思いを馳せて 上林誉一
  • 「建築基準法改正に伴うセミナー」の報告 松井英子
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • 民家ネットワーク 春・夏・秋・冬
  • JMRAイベント報告
  • 「民家フォーラム2007」協賛広告
  • 事務局ニュース
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐

2007年9月11日 (火)

56号(2007年9月発行)

山形県白鷹町の民家
撮影=桜庭文男(JMRA会員)

巻頭インタビュー
文化としての家の継承を民家再生で

建築家
降幡廣信

私は今日まで、再生の相談を受けましたらどんなところにでも出向きましたね。そうするようになったきっかけは、村松貞次郎先生の師である関野克先生との出会いです。

私どもの信州では、信濃教育会という小中学校の教師の勉強会が各分野の権威者の先生方を招いて会を開いているのです。昭和五八年の夏に関野先生がいらっしゃって「古い住宅は歴史を持った大切なものだから残していきましょう」という話をされたらしいのです。それを、私が再生した家に住んでいらした山田ヤチさんというおばあちゃんが聞きに行っていて、先生に「私は古い家を再生して便利にしていますよ」と自慢したのです。その再生民家を見に来られて、関野先生は私に会いたいと言われた。おばあちゃんから「すぐ来てくれ」と電話がありまして、私は駆けつけました。(後略)

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ふりはた・ひろのぶ

1929年長野県生まれ。1953年、関東学院大学建築科卒業。同大学建築学教室助手を経て、1961年に家業の山共建設(株)を継ぐ(三代目)。 1963年、降幡建築設計事務所設立。「民家再生」を提唱し、先駆的役割を果たす。JMRA会員。著書に『民家の再生−降幡廣信の仕事』『現代の民家再考』『民家再生の設計手法』『古民家再生ものがたり』『民家再生の実践』などがある。

  • 観世榮夫会長のご逝去を悼む 清沢和弘/佐藤彰啓/小原公輝/野本道江
  • 座談会 国産材の活用をどう進めるか 高本明生/杉浦干城/関謙二/小原公輝
  • 民家再生事例 長い「冬の寒い生活」から解放されて 青森県北津軽郡板柳町 三上邸 竹内和男
  • 茅葺きのはなし 入門編 吉村潤
  • 民家再生技術セミナーより 古民家再生の環境的側面を考える 講師/中島裕輔
  • シリーズ 民家の宿、民家の店 宿坊・そば処「極意」/会席料理「二木屋」
  • JMRA10シリーズ JMRAにこの人あり(5) 登録事業者で民家再生の仕組みづくり 和田勝利さん
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • 民家ネットワーク 春・夏・秋・冬
  • JMRAイベント報告
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐
  • 事務局ニュース

2007年7月11日 (水)

55号(2007年7月発行)

馬場家の七夕 (長野県松本市の重文馬場家住宅) 撮影=北村耕一(JMRA会員)

巻頭インタビュー
年齢とともに家も成長していく

食生活研究家
魚柄仁之助

昭和25年に建てられた木造の家に8年前から住んでいます。戦後の物資がない時代の建物で木材が細く、根太がかなり傷んでいたので、住む前に全部ジャッキアップして総入れ替えし、梁もあとから入れ込みました。この造作をしたのは、秋田出身の70歳を超えた大工さん2人。経験豊かで、大きな木槌でバカーンと梁を入れていましたね。 室内の電線は碍子(がいし)で結んでいます。その大工さんに「Fケーブルはネズミがかじって漏電することがあるから、碍子で電線を張っていったほうが安全だよね」と話したら、「碍子やらせてくれる?」って。やりたいのに、機会がなくなってしまっていたようです。(後略)

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うおつか・じんのすけ

1956年、福岡県生まれ。中学生のときにボブ・ディランに憧れ、ミュージシャンとしても活動。大学時代をすごした宇都宮でのバイク・自転車店主を経て、 1983年に東京都で古道具屋を開き、15年続ける。『台所リストラ術』(農文協・文庫は講談社)、『食べちゃる!!』(世界文化社)、『うおつか流あぶないニッポンで安全に暮らすためのヒント100』(日貿出版)など、著書多数。漫画『おかわり半蔵』の原作者(テレビ東京系TVドラマで放映され、DVD 化)。

  • 能登半島地震被災地での相談活動に参加して
  • JMRA設立10周年企画シリーズ これからの民家の残し方(3) 家への尊敬に基づいた民家再生を 横浜国立大学大学院准教授 大野敏 聞き手:大沢匠
  • 短期シリーズ 古材利用のアイデア(6) 小林秀樹
  • つくって楽しむ「ナヤ・ミュージアム」 登録文化財兒山家住宅の試み 兒山万珠代
  • 体験的民家再生考(17) 民家再生、斯くあるべき 構造を温存し、材の美しさを生かす 野本道江
  • 民家の生きるまちづくり(20) 農家蔵保存でグリーン・ツーリズム 青森県平川市尾上地区「NPO尾上蔵保存利活用促進会」
  • 民家再生事例 古い物との出合いとなった「草深の家」の再生 広島県福山市 O邸 繁森隆義
  • JMRA設立10周年企画シリーズ JMRAにこの人あり(4) 熱い「民家力」で成功したフォーラム 長谷川和男さん
  • シリーズ 民家の宿、民家の店 蚊帳・蚊帳地製品「吉田蚊帳店」/そば処「西の蔵」
  • 民家ネットワーク 春・夏・秋・冬
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • JMRAイベント報告
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐
  • 事務局ニュース