情報誌「民家」

2007年5月11日 (金)

54号(2007年5月発行)

あんずの里にて(山形県米沢市)
撮影=佐野昌弘(JMRA会員)

巻頭インタビュー
民家は日本人にふさわしい巣

映画作家
大林宣彦

木と紙でできた日本の家屋は、気配(けわい)の家だと思うのです。どこにいても家族の息づかいが聞こえ、隣の部屋の両親の話し声でどんな一日だったかが感じられる。人間だけではなくて雨の音、風の音、窓を開ければ落ち葉が舞い込んでくる。お互いが気配を感じ合うことで会話がなくてもコミュニケーションがとれる。それが日本の社会だったのです。

ところが戦後に入ってきた欧米の家は、部屋に入ると孤独になるわけです。隣の部屋の人には声をかけ、夫婦でさえ「アイ・ラブ・ユー」と何度も声をかけあう。それは彼らにとって言葉を交わすことがコミュニケーションの手段だからで、そういう文化の違いは風土によるものです。家というのは人間の巣ですから、自然風土に見合った手近なもので作るのが理にかなっているのに、戦後、私たちは巣の作り方を変えてしまった。言葉を交わす習慣がなかった日本人が気配の伝わらない家に住んでしまったがために、家族も個人の生き方も変わってしまい、それが日本社会を壊していく大きな要素になったのだろうと思います。(後略)

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おおばやし・のぶひこ

1938年広島県尾道市生まれ。16ミリ第一作「喰べた人」(63)でベルギー国際実験映画祭審査員特別賞を受賞。77年「HOUSE/ハウス」で劇場映画にも進出。同年「瞳の中の訪問者」とともに“ブルーリボン新人賞”を受賞。故郷で撮影された「転校生」(82)「時をかける少女」(83)「さびしんぼう」(85)は“尾道三部作”と称され親しまれている。そのほか、主な作品として「はるか、ノスタルジィ」(92)「あした」(95)「なごり雪」(02)など。「青春デンデケデケデケ」(92)で平成4年度文化庁優秀映画作品賞、「SADA」でベルリン国際映画祭国際批評家連盟賞など受賞も多数。最新作は「22才の別れLycoris葉見ず花見ず物語」(06)「転校生さよならあなた」(07)。2004年春の紫綬褒章受章。

  • レポート JMRA設立10周年記念イベント 伝統芸能“能”と古民家の暮らし
  • 座談会 JMRA設立10周年記念イベント 古民家に暮らして 住まい手のホンネ
  • JMRA設立10周年企画シリーズ「これからの民家の残し方」(2)民家への理解者を増やす「人育て」を 山梨大学准教授 田中勝 聞き手:石川重人
  • JMRA設立10周年企画シリーズ JMRAにこの人あり(3)ボランティアに支えられた情報誌『民家』 石津尭
  • 民家の生きるまちづくり(19)空き家等対策で大和今井町を活性化 奈良県橿原市今井町 「NPO今井まちなみ再生ネットワーク」理事長 上田琢也
  • 民家再生事例(1)4代にわたる家の息づかいを伝える再生 福島県いわき市 K邸 宗像智加枝
  • 民家再生事例(2)遠州の民家が三河の山の麓に返り咲き 愛知県岡崎市 黒邸 黒好史
  • 民家ネットワーク春・夏・秋・冬
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • シリーズ 民家の宿、民家の店 料理茶屋「魚志楼」/玄米心食「あいすなお」
  • JMRAイベント報告
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐
  • 事務局ニュース

2007年3月 1日 (木)

53号(2007年3月発行)

日だまりの縁側(京都府南丹市美山町)

巻頭インタビュー
自然の生命を暮らしに取り戻そう

料理研究家
中村成子

今から10年ほど前、島根県の旧仁多郡横田町(現、奥出雲町)にいまだに牛糞堆肥を使い、天日干ししてつくる美味しいお米があると聞きました。そのことを当時連載していた新聞のエッセイに書きましたら、すごく反響をいただきまして、現場を訪ねたことから始まりました。

そこには、私が幼い頃に見た懐かしい田園風景と変わらない情感のある風景が広がっていました。その町の町長さんからの依頼で講演をいたしましたとき、最後に「願わくば、こんな山々に囲まれた自然の美しいところに棲んでみたい……」と結んだのです。そのことが後に「食と農」をテーマとした町の交流施設へ繋がり、私が棲むことにもなりました。(後略)

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なかむら・しげこ

1942 年東京都生まれ。食素材本来の味を引き出す家庭料理を提案する料理研究家。NHK「今日の料理」、日本テレビ「3分間クッキング」講師をはじめ雑誌、新聞等でも活躍。2001年、島根県仁多郡奥出雲町ふれあい交流館館長に就任。同町で「一味同心塾」を主宰し、地域との交流、活性化に尽力。『中村成子の始末の料理』(婦人之友社)、『奥出雲発・中村成子のうまし料理』(家の光協会)、『柚子のある暮らし』(文化出版局)ほか著書多数。「粟國の塩を守る会」代表。

  • JMRA設立10周年企画シリーズ これからの民家の残し方(1) まちづくりは「フローよりストック」へ 新潟大学助教授 岡崎篤行 聞き手:清沢和弘
  • 投稿 沖縄に移築された店蔵を訪ねて 民家提供者の思い 平尾健二
  • 民家の生きるまちづくり(18) 潮待ちの港町の歴史と文化を残したい 広島県福山市鞆町 「鞆まちづくり工房」代表 松居秀子
  • 体験的民家再生考(16) 住み継ぐ思いが民家を残す 深澤渡
  • 民家再生事例 第二のふるさとに甦った「枠の内」 石川県金沢市 田中邸 串田政規
  • JMRA10周年企画シリーズ JMRAにこの人あり(2) JMRA発足前からCIデザインが始まった 大橋成夫
  • 古材利用のアイデア(5) 佐藤丈美
  • 民家ネットワーク 春・夏・秋・冬
  • シリーズ 民家の宿、民家の店 そば・うどん「丹三郎」/手打ちそば「さか間」
  • 「JMRA民家バンク」おすすめ情報!
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • JMRAイベント報告
  • 民家再生Q & A
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐
  • 事務局ニュース

2007年1月 1日 (月)

52号(2007年1月発行)

昭和45年頃の旧山古志村の雪下ろし(新潟県長岡市山古志)『写真集 山古志の人々〜前編〜』より
撮影=外山和雄

巻頭インタビュー
民家は心を解放する

映像人類学
姫田忠義

私は1961年から45年間にわたって日本列島各地を訪ね歩き、人がどうやって暮らしているのかを記録し続けています。民家を焦点とした記録が目的ではないですが、のっぴきならずそこに家が存在しています。要するに、人間が地球上で生命を持続していくために必要なシェルターが家だからだろうと思います。

民家に関して貴重な体験をさせてもらったのは、世界遺産になった白川郷で合掌造り民家の解体移築を記録したことです。その構造は、大地に石を置いてその上に柱を立てるのですが、固定せず柱は石の上に乗っているだけです。その柱を上にたどっていくと、屋根材の先端が乗っている。結束はしてありますが、これも固定はしていない。だから冬に風速20メートルもある強い北風を妻側から受けると、構造体そのものが二メートルも傾くといいます。そして風がやめば元に戻る。そのときにギュギュギュとものすごい音がするそうです。たいへんな復元力です。このような建物からは人間の知恵、あるいは何か生命の原理のようなものを考えさせられ、とても勉強になります。(後略)

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ひめだ・ただよし

1928年兵庫県神戸市生まれ。旧制兵庫県立神戸高商(現兵庫県立神戸商科大)卒。54年上京して、新劇活動、テレビのシナリオライターのかたわら民俗学者宮本常一氏に師事。61年から映像による民族文化の記録作業をはじめ、76年民族文化映像研究所設立。以来、同研究所所長。89年フランス芸術文学勲章オフィシエール受勲。98年第7回日本生活文化大賞個人賞受賞。徹底したフィールドワークを基礎とするその活動は、日本記録映画史においてもユニークな立場を築き、海外の研究者からは「映像人類学」と捉えられている。フランス・コレージュ・ド・フランスとの共同作業やハーバード大学での講演・上映会など、姫田忠義と民族文化映像研究所のフィルムは世界各地にも出かけている。

  • 「民家フォーラム2006」特集
    • フォト・レポート 福山市沼隈にのべ800人が集う
    • シンポジウム「民家から考える暮らしと地域の再生」
      講演 語りつぎたい日本の心と技と美しさ 宮大工・人間国宝 松浦昭次
      パネルディスカッション報告 民家から考える暮らしと地域の再生
    • ミニセミナー報告
    • 民家ツアー報告
    • オプショナル民家ツアー報告
    • 民家フォーラムに参加して
    • フォーラムを振り返り、これからのJMRAを展望する 藤本政彦
  • 新潟県中越地震・被災住宅修復支援活動を振り返って 長谷川順一
  • 民家再生事例 職人の技で家の記憶を残す 福岡県古賀市 安武邸 照井善明
  • 10周年記念企画シリーズ 10年前からJMRAにこの人あり 安井啓子
  • 古材利用のアイデア(4) 石川重人
  • 民家ネットワーク 春・夏・秋・冬
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • JMRAイベント報告
  • 第1回「民家再生奨励賞」が決まる
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐

2006年11月 1日 (水)

51号(2006年11月発行)

沼隈地区(平家谷)の民家群(広島県福山市)
撮影=関根武(JMRA正会員)

巻頭インタビュー
覚えていれば人も家も繋がっていく

映画監督
せんぼんよしこ

今回、初めて監督した映画「赤い鯨と白い蛇」は五世代、五人の女性たちの話ですが、古い家というものが非常に重要な位置を占めています。それがドラマの芯になるので、制作スタッフにあちこち古民家を探してもらい、JMRA会員の山中さんのお宅に辿り着きました。山中邸の第一印象は、「この家だったらできるな」というものでした。私たちは脚本を読んでいるときから俳優さんの動きを想像しますが、あの家に入ったときすぐに絵が浮かんだのです。その後も何軒か見学したのですが山中邸がどうしても頭から離れず、撮影に使わせていただきました。(後略)

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せんぼん・よしこ

1928年旧満州・大連生まれ。早稲田大学文学部演劇科卒業。1953年、日本テレビ開局とともに入社。一期生としてテレビ草創期より活躍し、ドラマ演出の草分け的存在となる。59年よりスタートしたテレビドラマシリーズ「愛の劇場」では4年間連続200回演出で黄金時代を築き、日本放送作家協会第1回演出者賞を受賞。61年には「愛の劇場」シリーズの「縁」で芸術祭奨励賞受賞。木曜ゴールデンドラマ「ああ!この愛なくば」で芸術祭大賞、「明日一九四五年八月八日・長崎」で芸術作品賞を受賞。日本テレビ退職後もフリーとして数々の秀作ドラマを発表。映画「赤い鯨と白い蛇」で映画初監督し、モントリオール世界映画祭FirstFilmsコンペティションに正式出品された。

  • 今、民家に住まいつづける 三溪園イベント・ミニ講演より 杉浦干城
  • 初秋の三溪園で伝統芸能を楽しむ 三溪園イベント・レポート
  • 古材利用のアイデア(3) 武部豊樹
  • 大工棟梁に聞く 第5期きんき民家塾 第3回講義より 数寄屋大工棟梁 木下孝一
  • この人この仕事 木挽き職人 東出朝陽さん 芹田健嗣
  • 民家の生きるまちづくり(17) 重伝建地区指定で山村のむらおこし 群馬県吾妻郡六合村赤岩地区
  • 民家再生事例1 住み継ぎ棲み繋ぐ木の家 岐阜県高山市 村田邸 長房直
  • 民家再生事例2 若い世代への民家再生 茨城県日立市 石井邸 松井英子
  • 新潟県中越地震被災地を再訪して 清沢和弘
  • 「空家プロジェクト」レポート 越後妻有アートトリエンナーレ2006 荻野邦彦
  • 民家ネットワーク 春・夏・秋・冬
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • 「民家の学校」北海道セミナー2006 レポート 佐藤宣雄
  • JMRAイベント報告
  • 事務局ニュース
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐

2006年9月 1日 (金)

50号(2006年9月発行)

秋の日々(富山県利賀村)
撮影=乗兼広人(JMRA正会員)

巻頭インタビュー
暮らしをデザインして伝えていく

デザイナー
松場登美

25年ほど前に、夫の郷里である石見銀山のふもとの島根県大田市大森町に住むようになりました。私が大森町に来た年は、小学校の卒業生がたった一人。荒れ果てた民家が立ち並んで、石見銀山の観光地ではあっても誰一人訪れないような寂しい町でした。上から下まで約一キロの集落に当時人口が500人。でも私自身は来た当時から何か肌が合うといいますか、よくヒューマンスケールという言葉を使いますけれど、誰もが顔を見ればわかる心地よい規模だと思っていました。

そこで物づくりを始めて、18年前に自宅前にあった築150年くらいの空き家を改装して店をつくりました。誰もが「何でこんな辺鄙なところに……」と言いましたけれど、私にとっては自然に恵まれた小さな集落がとても魅力的だったのです。たまたま縁あった所をよしとして、いいところを見つけていく暮らしのほうが幸せに繋がるのではないかと考えていました。(後略)

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まつば・とみ

1949年三重県生まれ。1981年、夫(松場大吉)のふるさと大森町(石見銀山)に帰郷。実家、松場呉服屋の片隅で布小物の製造、販売を始める。 1989年、築150年の古民家を修復し「ブラハウス」をオープン。以来、数軒の古民家を修復し、生活文化交流の場として活用。1993年より10年間、女性による女性のためのフォーラム「鄙のひなまつり」を主催。1996年、国土交通省・地域アドバイザーに就任。1998年、株式会社石見銀山生活文化研究所を設立、所長就任。2003年、NPO法人「納川の会」発足、理事就任。内閣府・観光カリスマ百選の一員に任命される。

  • 『民家』50号を迎えて 佐藤彰啓
  • 茅葺き民家の保存から、農村の未来を考える 茨城県石岡市八郷地区にて 関野和男/関野育/木崎眞/武田清一/高橋久
  • 「古民家でロケをする」ということ 映画「赤い鯨と白い蛇」の制作を担当して 市川幸嗣
  • 夢の古民家オーナーシップ 山梨県塩山での現地再生の経験から 松前俊顕
  • 体験的民家再生考(15) 民家再生には慎重でありたい 三宅義昭
  • 民家再生事例 兄弟姉妹で残した大切な家 長野県上水内郡小川村 K邸 峯村洋
  • 古材利用のアイデア(2) 棚橋みさ子
  • シリーズ 民家の宿、民家の店 そば処「草々」/日本料理「米宗」
  • 民家ネットワーク 春・夏・秋・冬
  • 書籍紹介 『歴史的遺産の保存・活用とまちづくり』『百年前の伝言板』
  • 「JMRA民家バンク」情報
  • JMRAイベント報告
  • おいでんさい「民家フォーラム2006」
  • 『民家』総目次(20号〜49号)
  • 『民家』50号記念「ひと言メッセージ」
  • 事務局ニュース
  • 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐