44号(2005年9月発行)
寄せ棟藁葺き屋根のドイツ民家(ドイツ、シュヴァルトヴァルト地方グタッハ)撮影=太田邦夫
巻頭インタビュー
藁葺き屋根から幸せを掴む
漫画家
水木しげる
昔から民家は大好きです。私が子どもの頃は、藁葺き屋根の民家が現役として田舎にありましたけれど、今では想像がつかないほど落ち着いた雰囲気でした。
そういう民家が減って、夜も明るい世の中になって、妖怪の居場所も減ってしまいました。妖怪とは、人間が目に見えないものを関知したものです。
古い家にいる妖怪は、土壁や藁葺きが条件ですから、そういう民家がないと妖怪は生まれないのですよ。コンクリートを使っただけで、妖怪の住める「感じ」がなくなってしまいます。古民家のような場所が少なくなって、妖怪たちは寂しがっていますよ。
藁葺きの民家がなくなってから、世の中がなんとなく落ち着かなくなって、あくせくする感じになりましたね。江戸時代にはおそらく物はなかっただろうし、貧乏だったかもしれないけれど、それなりに幸せで落ち着いた生活があったと思います。それが大正、昭和となってくると、なんだかみんなが慌て者にならざるを得ないような世の中になってしまった。
落ち着いた藁葺き屋根は、多ければ多いほど幸せ感があり、満たされる感じがしました。そんな雰囲気のなかで昔の人は、金が無いなりに幸せの形を掴みかけていたような気がします。かつては、藁葺き屋根から幸せを掴んでいたのではないでしょうか。(抜粋)
みずき・しげる
1922年生まれ。鳥取県境港市で育つ。太平洋戦争時、激戦地であるラバウルに出征し、爆撃を受け左腕を失う。復員後紙芝居画家となり、その後貸本漫画家に転向。1965年、『別冊少年マガジン』に発表した「テレビくん」で第6回講談社児童まんが賞を受賞。代表作に「ゲゲゲの鬼太郎」「河童の三平」「悪魔くん」などがある。1991年紫綬褒章、1996年日本漫画家協会文部大臣賞、2003年旭日小綬章を受章。2003年3月、故郷の境港市に水木しげる記念館が開館した。
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