情報誌「民家」

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2010年5月 9日 (日)

72号(2010年5月発行)

Cover_72 かぶと造りの民家
(長野県四賀村=現在は松本市)
撮影=中沢義直

巻頭インタビュー
茅葺き屋根を描ける物語を作りたい

絵本作家/飯野和好

ぼくは、秩父の農家で生まれました。戦国時代から続く山間部の小ぶりな半酪半農の家です。明治生まれの祖父が家の中のことや行事を全部仕切っていた。竈(かまど)や囲炉裏の火を絶やさず、竈には竈の神さま、囲炉裏には囲炉裏の神さま、外には氏神さまがいて、必ずお正月やお盆には、水やお餅をあげていました。そういう暮らしが当たり前にあったのです。
幼い頃、家の囲炉裏に大人が集い、話しているのを聞くのが楽しみでした。土間があって、上がり框(がまち)に囲炉裏があり、隣近所のおばさんやおじさん、薬売りや、家に来た人が、そこへ座ってちょっと話してお茶を飲んで帰っていく。奥まで行かないんですよ。寄る方も気楽だし、迎える方も構えずに済む。気軽に誰でも立ち寄って、漬物をつまんで今年の漬物のできはどうだとか、あそこの家では何があったとか、そろそろ種まきの時期だとか情報交換をして、長居しないで帰るんです。
そして、農作業が終わると、またそこでお茶を飲む。大人たちの汗のにおいと畑のにおい、そんないろんなものが混ざったにおいが好きだったなあ。囲炉裏端は、なかなかいい場所でしたね。

また、家が養蚕もやっていたので、夏になるとお蚕さんのために全部二階を開け放ち、どこからでも見えるようにして親たちが働いていました。ぼくもよく手伝わされました。夜なべ仕事も。子どもには子どもができる範囲でちゃんと仕事があった。勉強なんかは二の次。それが今は一番の宝物のように残っています。
いつも活気に溢れた家で、鶏やら牛、豚の声までにぎやかで、生きものがみんな一緒に生きているという感じでした。そんなにお金があったわけではないけれど、とても豊かな気持ちで、安心していられた。あんな暮らしができたのは幸せだったと思います。(後略)

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Face_72

いいの・かずよし

1947 年埼玉県秩父生まれ。絵本作家・イラストレーター。『小さなスズナ姫』(偕成社1996)シリーズで第11 回赤い鳥さし絵賞、『ねぎぼうずのあさたろう その1』(福音館書店1999)で第49 回小学館児童出版文化賞を受賞。全国各地で股旅姿の絵本の読み語り講演、ブルース・ハープミュージシャンとしてもライブで活躍。

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