71号(2010年3月発行)
岩木山を額縁にして(青森県岩木町葛原)
撮影=桜庭文男
巻頭インタビュー
伝統産業の「極める文化」が日本を支える
プロダクトデザイナー/喜多俊之
日本の伝統工芸の方々とお付き合いを始めてもう40年くらいになります。1960年代の後半からですが、その頃伝統工芸がいちばん衰退の激しい大変なときでした。現在では人々の認識が変わりつつありますが、当時は「古いものは時代遅れ」という考え方が一般的でした。
知り合いになった美濃の和紙職人の方が「もうやめようと思うんですよ」と言うのを聞いて「何か使い方を考えてみます」と約束しました。その年から私はイタリアに行くことになっていました。それで、向こうで照明器具のデザインをする機会があったときにその職人の紙を使ったのです。インテリアブームが始まっていた現地でそれがヒットしたのです。
その職人さんの元に大量の注文が来るようになりました。そのとき、それを見て、使えば日本の伝統工芸も生き延びる道があるのだということに気が付いたのです。
これが契機で、そのあと輪島の漆塗、佐賀の有田焼など、産地の方々とお付き合いが続きました。伝統工芸の仕事をライフワークとしてやろうと決心したのも、その和紙を使った照明器具TAKOのヒットにありました。
私が六〇年代後半に渡ったイタリアは、戦後の復興から立ち直って、新しいものだけでなく過去の古いものの値打ちに人々が注目する時代に入ったときでした。時間のたったものほど値打ちがあるとして手に入れたいと考えはじめた頃でした。都市や山間部、漁村にある値打ちのある家などを、行政が保存の手を差し伸べ、またそれらに共感する人は買い始めていました。(後略)
きた・としゆき
1942 年大阪市生まれ。1969 年より、プロダクトデザイナーとして、日本にとどまらずイタリアを始め、国際的 に制作活動を拡げていく。家庭日用品、家具、液晶テレビ、ロボットに至るまで、多くのヒット商品を生む。作品は、ニューヨーク近代美術館、パリ国立近代美術館、ミュンヘン近代美術館などに多くコレクションされている。近年は、大阪芸術大学にて教鞭をとるほか、中国でのRed Star Award 審査委員を務めるなど、教育活動にも力を入れている。長年にわたり、日本の伝統工芸、地場産業の活性化に関わる。近著に『地場産業+デザイン』がある。
- 「フランスの美しい村々と民家を訪ねる旅」から/フランス民家協会との実り多い交流 佐藤彰啓
- フランスの古民家事情 日塔和彦
- ようこそ民家園へ(1)/全国各地の民家を集めた野外博物館 奥山淳三
- 民家再生事例/特別なことでない民家再生へ 静岡県藤枝市 F邸 杉村喜美雄
- この人この仕事/石積み工 霜村次朗さん 杉浦干城
- 読者のひろば 民家ネットワーク
- 書籍紹介 『それでも「木密」に住み続けたい』
- 「JMRA民家バンク」情報
- JMRAイベント報告
- 民家の宿、民家の店
- 事務局ニュース
- 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐





