情報誌「民家」

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2009年10月22日 (木)

68号(2009年9月発行)

Cover_68 畜舎兼納屋と主屋をつないだ分棟型
民家 撮影=大橋富夫
(大橋富夫写真集『日本の民家 屋根
の記憶』彰国社刊より)

巻頭インタビュー
本当に深いものは数値では表せない

数学者/藤原正彦

皆さんが卒業した小学校の校舎は木造だったでしょうか。しかしいま、その校舎はおそらくほとんどがコンクリートで建て替えられていると思います。
それが最近、木造校舎が見直され、復活運動が起きてきているようです。当然でしょう。私は木造校舎を見ると、「あっ、涙がにじんでいるな」と思います。子どもたちや先生、両親、みんなの何十年間もの涙が古い木造校舎ににじんでいる。コンクリートの校舎は涙をはじいてしまいます。それだけでも、子どもたちが成長したときの思い出の感触がまったく違います。

こうした感触が木造とコンクリートでどう違うかは、数値で表すことはできません。所得のようなわけにはいかない。本当に深いものは数値では表せないのです。数値を並べた理屈ばかりでは人間は救われません。
「民家はいいなあ」「美しい自然はいいなあ」あるいは「もののあわれというのは心持ちがいいなあ」。そうした情緒的なものを大切にする運動が、どんどん広がっていってほしいものです。コンクリートジャングルのような地 域と、川や森が見える地域に育った人とでは心持ちも違ってきます。
美しい自然が身近にないと、美的感受性は育ちません。この感受性がないと、数学や物理といった自然科学、もちろん優れた文学も芸術も生まれません。ノーベル賞を受賞するような新しい発想は生まれてこないのです。(後略)

全文を読む(pdf 188KB)

Face_68

ふじわら・まさひこ

1943 年、旧満州生まれ。
東京大学理学部数学科大学院修士課程修了。お茶の水女子大学名誉教授。数学者、エッセイスト。作家・新田次郎と藤原ていの次男。
『数学者の言葉では』『若き数学者のアメリカ』(日本エッセイスト・クラブ賞受賞)『遥かなるケンブリッジ』『国家の品格』など著書多数。

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