66号(2009年5月発行)
水害に備えた高い石垣のある土蔵 撮影=林 安直巻頭インタビュー
木の文化をもう一度取り戻したい
建築家
隈 研吾
僕は、横浜の大倉山というところで育ちました。大井町で医者をしていた祖父が畑仕事が好きで、大倉山に農家から畑を借りて、そこに小さな小屋のような家を建てて週末は畑仕事をしていたのです。それをそのまま改装した家に住んでいました。
東横線の沿線ですが、僕の育った昭和30年代は田舎から都市に切り替わる時期で、ビニールクロスにアルミサッシに蛍光灯というような典型的な高度成長期の住宅がすごい勢いで建っていきました。そのなかで、僕の家だけが友だちの家に比べて古くて、平屋で土壁のあばら家でした。最初はどうしようもなく恥かしかったのですが、ある時期から「これがよい住まいではないか」と自分のなかでの価値観が逆転して、自分の建築に対する好みとか好き嫌いがはっきりしてきました
この自分の育った家が、僕が建築を考えるうえでの原点になっていると思います。
その頃、あの辺は山の麓に農家が並んでいました。その農家の友だちの家に行くと、僕の家よりさらに古い家で、床下に青大将が住んでいるし、井戸には沢ガニがいて、竹やぶの中を登っていけばウズラがいたというような時代です。そういう空間を体験したことが、今につながっていると思います。(後略)
くま・けんご
1954年横浜生まれ。1979年東京大学建築学科大学院修了。コロンビア大学客員研究員を経て、2001年より慶應義塾大学教授。2009年より東京大学教授。1997年「森舞台/登米町伝統芸能伝承館」で日本建築学会賞受賞、同年「水/ガラス」で アメリカ建築家協会ベネディクタス賞受賞。2002年「那珂川町馬頭広重美術館」をはじめとする木の建築でフィンランド よりスピリット・オブ・ネイチャー 国際木の建築賞受賞。近作にサントリー美術館。著書に『自然な建築』(岩波新書) 『負ける建築』(岩波書店)『新・都市論TOKYO』(集英社新書)
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