62号(2008年9月発行)
伊根の舟屋撮影=大橋富夫
巻頭インタビュー
人を育む風景を残す
写真家
小松義夫
家の形やその中にいたときの感覚は、まわりの風景も含めて、人間の情緒をつくるもとになると思います。学校までの道で見る家並み、目印になる大木なども、心を育てます。だから、そうした風景を壊すことは心を踏みにじるようなもので、非常に残酷なことなんじゃないかな。
いまの日本は、その残酷さを正視できず、見ても見ぬふり、感じないふりをしてしまっているように見えます。これは、一つの防御なのかもしれません。なじんできた景観があまりにも簡単に壊されるので、それにいちいちに心が動いては生きにくいからです。しかし、これでは荒れた心の人間が増えていってしまうと、本当に心配しています。
僕は、東京都大田区に同潤会が建設した日本初の建売住宅で育ちました。同潤会は関東大震災後に住宅供給を目的として設立された財団ですが、アメリカから義捐金とヒノキをたくさん送ってもらったらしいんですね。それで僕の家も、ヒノキで造られ、廊下もまさめのヒノキ造りでした。大工さんの技も素晴らしかった。相続税の関係で、どうしても残せませんでしたが。
家が壊されるとき、息子が「この家のことは絶対忘れないからな」と吐き捨てるように言っていました。僕にすれば、こうした家で二人の子どもを育てられたのは、たいへんラッキーだったと思います。(後略)
こまつよしお
1945年、東京都生まれ。スタジオカメラマンを経て、南米・東欧を皮切りに世界各国で人々の暮らしを中心に取材を続けている。1981年にはヒマラヤK2の登山隊にカメラマンとして同行し、ドキュメンタリー番組「K2西壁苦闘の60日」の製作に参加。カレンダー「世界のおもしろ住宅」(松下電工)の制作を約20年続けた。現在も、多くの時間を海外取材に費やす。 主な著書に『地球生活記』『地球人記』(福音館書店)、『世界の不思議な家を訪ねて』(角川oneテーマ21)など。
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<目次>
- 対談 外国人から見た日本の民家
ハンス・ハルダム オースティン・H・モーア
- わが地域の民家(5) 富山県南砺市地域のアズマダチ 松田博司
- 移築再生で教えられたこと 静岡県藤枝市「青野さんち」 杉村喜美雄
- わたしの民家再生 大工とともに自ら汗を流し実家を再生 大津憲一
- これ木連シンポジウム報告 「このままでは伝統構法の家がつくれない!」
- 「JMRA民家バンク」情報
- JMRAイベント報告
埼玉/第四回建て主による建て主のための「民家再生ここだけの話」
奈良/町並みスケッチハイクと蛍能の夕べin大宇陀
神奈川/鎌倉の移築再生民家見学会「蔵と田の字型民家再生に学ぶ」
新潟/秘湯名木の湯 ホタルを楽しむ夕べの会
- 民家ネットワーク 春夏秋冬
- 書籍紹介 『ボローニャ紀行』『大橋富夫写真集 日本の民家 屋根の記憶』
- シリーズ 民家の家 民家の店
コテージ「CANAC」民芸茶房「木亭」
- 緊急レポート 岩手 宮城内陸地震の被災地を訪ねて 広島県東広島市志和町志和堀 佐々木文彦
- 小さなかやぶきの里を訪ねて 森田伊佐
- 事務局ニュース





