情報誌「民家」

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2009年7月23日 (木)

60号(2008年5月発行)

Cover_60_2 早苗田に映る民家
撮影=桜庭文男

巻頭インタビュー
価値観の転換がスタート

建築家
池田武邦

自分が設計した、快適で効率のよい超高層ビルの最上階オフィスから街に降り立ったとき、雪が舞っていました。ぶるぶる震える寒さでしたが、なぜかやすらぎ、気持ちがよかった。天をあおぎ、「人間も自然の一部なんだ」とつぶやいていました。

このときの気持ちが忘れられず、人工的な環境を前提とする建築に疑問を持つようになりました。1970年代のことです。それまで自分が懸命に行ってきた活動を否定するのですから、ショックは小さくない。このときの心情は、被弾し沈没した軽巡洋艦「矢矧」から生還し、敗戦の日本と向き合ったときに似ていたように思います。

それから80年代、東南アジアや南米、アフリカといった伝統的な住まい方が残る地域を訪ね、家を見て歩きました。 たとえば、ジャワの山奥で出合った、ヤシの葉で葺いた急傾斜の屋根の家。造形的にも素晴らしく、素材はすべて周辺の地域でとれるヤシの葉や木材でした。ヤシの葉は、雨期になると水分を含み、ベターッとくっついて水密になる。雨は屋根の急勾配に沿って流れ、家の中には入りません。また、乾期にはヤシの葉がカラカラに乾くのですきまができ、通風がよくなる。天然のクーラーになっているのです。(後略)

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いけだ たけくに

1924年、高知県生まれ。1945年、海軍士官として乗艦していた軽巡洋艦「矢矧」が被弾、沈没。火傷を負い、5時間漂流するも九死に一生を得る。1949年、東京大学第一工学部建築学科卒業。1967年、日本設計事務所(現・日本設計)の設立に参加し、取締役に就任、1976年に代表取締役、1993年に代表取締役会長、1997年から名誉会長。この間、霞ヶ関ビル、新宿三井ビルなど、黎明期の日本の超高層ビル建築に携わる。その後、環境問題に取り組み、1992年にオープンしたハウステンボスのコンセプトづくりにも深く関与した。

    <目次>
  • わが地域の民家(3)長野県中南信地方の本棟造り 長野県・正会員 安藤政英
  • 新潟県中越沖地震における 被災住宅修復支援活動の報告(後編) 新潟県・正会員 長谷川順一
  • 韓国の民家を訪ねて 大阪府・正会員 小原公輝
  • 民家再生事例 三世代が暮らす湖南地域の伝統的な家 滋賀県・正会員 伊東裕一
  • 民家に暮らす 昔ながらの暮らしがしたくて 愛知県・友の会会員 梅田道夫
  • ブルガリアの農村を訪ねて ―民家・街並み保存と観光開発― 建築家 太田邦夫
  • シリーズ 民家の宿、民家の店 中華そば「三角そばや本店」/おかき処「蕪村庵」
  • 民家ネットワーク 春・夏・秋・冬 
  • 書籍紹介 『中古民家主義』
  • 「JMRA民家バンク」情報 
  • JMRAイベント報告 
    第三回「すみあい塾」(広島県広島市安芸区)
    大磯「鴫立庵」と鴨宮「岩瀬邸」の見学会(神奈川県中郡大磯町・小田原)
    第四回茅葺きの里・八郷の散策と地元保存会との交流会(茨城県石岡市・笠間市)
    民家セミナー「民家・田舎暮らしの実例紹介」(大阪府東淀川区)ボランティアグループ・民家お助け隊連続公開講座
    「土の文化を極める」一年の活動
  • 小さなかやぶきの里をたずねて 森田伊佐
  • 事務局ニュース